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第134話 似たもの同士
リクはデスクワークを終え、新曲の準備をしている78のスタジオに向かった。楓と辰徳が目立つ構成と、ボーカルにルイも加わり、今までとは違う大人っぽい表現力が求められる。ダンス講師にはコンセプトを伝え、振付案や構成も打ち合わせ済みだ。
「お疲れーす」
「リクさん!お疲れ様です」
ダンス講師の大輔は慌てたように挨拶をしてきた。
「抜き打ちでごめんな。見ていい?」
「もちろんです!…リクさん、驚きますよ?俺も驚きました。」
「ん?何が?」
「今回、この曲売れますよ!表現力がめちゃくちゃ上がってます」
「まぁ、とりあえず見せて」
それぞれが自分の振り確認している中、メンバーを集める。ふざける時はふざけるが、本番が近くなると集中するのが良いところだ。
「通しでやるから。そのあとリクさんからダメ出しを貰います」
「「はい!」」
全員が定位置につく。
入りは辰徳から。
(おお!いいな)
やっぱり顔がいいだけある。表現力もついてきた。情熱的なダンスはイメージ通りだ。その後の楓とのダンス、からの楓ソロは鳥肌が立つほど見せ方が良かった。
(楓ー!やるじゃん!!)
色気と切なさを表現できていて、リクは思わずニヤついた。しかし、1番の驚きはルイだった。
(っ!?…こいつ、いつからこんな顔できるようになった!?動きも繊細だけどダイナミック。化けたな)
曲が終わって全員が荒く呼吸をしてしゃがみ込む。
「お前ら、かなりいいじゃん!!」
素直に言うと、嬉しそうにハイタッチをするメンバー達。
「特に、楓とたつ、ルイも!すげー良かったよ!」
ありがとうございます、と頭を下げる楓と辰徳。ルイはニコニコしながら、楓の隣にくっついている。
「ルイ、お前化けたなぁー」
「え?お化けみたいだった?ヒットうちすぎた?」
「違うよ、表現力が上がったなってこと。」
「ニシシ!楓のおかげだな?」
「黙れ」
「楓?照れてる?」
「うるさい、本当に黙れ」
「楓ー可愛いーっ!大好きー!」
汗だくの楓に抱きついたルイに驚く。周りを見ると、リクに頷いてアピールしている。
「今日のルイ…ずっとこんな感じで…」
「楓も満更でもないと言うか…」
龍之介と潤が苦笑いしている。
「楓、疲れた?俺にもたれていいよ?」
「疲れてねーよ。」
「でも、顔真っ赤だよ。大丈夫?」
「も、お前…本当やめろって」
ついに楓は腕で顔を隠した。耳は真っ赤になっていて、リクはニヤリと笑った。
(マジかよ!ルイを落としたのか楓!!)
ニヤニヤしていると、ルイは楓の頭を撫でて、ふわっと笑った。
(へー。ルイもベタ惚れってことね)
この日、ルイは楓にベッタリで、楓は憤死しそうなほど顔が赤かった。
「リクさん!ついに78もグループ内恋愛っすよ!」
「最高だなぁー!ま、ルイが飽きなきゃいいけどなぁ」
「マリンが無理だったから楓だったんだろうな。まぁ、楓もいつか冷静になるっしょ」
龍之介と潤は一時の感情だと爆笑していたが、ルイのあの顔は本気に見えた。
レッスンが終わって、一度デスクに行き、ルイを別の仕事に送るために待たせていたが、いなくなっていた。
(どこ行きやがった…全く!)
イライラしながら探し回ると、廊下で話しているルイを見つけた。
(あれ…大河?)
大河を壁に追い込んで、真剣な眼差しだ。大河は完全に萎縮していて可哀想に思い、助けてやろうと近づくと思わぬセリフに固まる。
「大河、楓は俺のだから二度と触らないでね」
「…すみませんでした…。知らなくて…あと、楓さんは悪くないです…俺が…」
「楓が悪いわけないじゃん。理由は聞いたから別にいい。俺は今後の話をしてるんだよ。もし、楓を誘ったりしたら、俺がマコちゃん抱き潰すからね」
「っ!!」
「大河、俺はね、アホだけど嘘はつかない。大河次第では本当にするからね」
「もう誘ったり、しません」
何があったのか分からないが、大河がひたすら謝って頭を下げていた。ルイは真顔からほっとしたように笑った。
「……良かった。本当はね…大河には…俺っち敵わないから…だから、大河はマコちゃんだけ見てほしい」
「ルイさん…」
「悔しいくらい似合ってた。だから、嫌だった。似合わないって言い聞かせてた。大河が嫌いなんじゃないよ。俺は大河のこと好きだし可愛い後輩だよ。でも」
「…」
「好きな人は渡したくない。分かってね?」
「…ルイさん、可愛い」
「そうかな?えへへ」
大河が笑うと、ルイも嬉しそうに笑っている。
(ルイが、本気になってる。)
「楓は、今までの恋と違うんだ。初めて取られたくないって思ってのスタートだから…ごめんね、大河。嫌な気持ちにさせちゃった」
「いえ!嬉しい気持ちです!お幸せに!」
ルイは満足気にこちらを見て驚いた様子で走ってきた。
「リクさん聞いてた?」
「うん。ぜーんぶ聞いた。」
「楓と付き合ったよ!」
「おめでとう。た・だ・し!どこでもペラペラ喋るなよ!とくにファンの前とかスタッフの前とか!それが守れないなら付き合いを認めねーよ」
「いやだ!ちゃんと守るから!」
「大河ー、ごめんな?こいつ連れてくわー!お疲れ!」
「お疲れ様でした」
ルイは頭を下げる大河に手を振ってご機嫌だった。
車に乗り込むと、楓への惚気が止まらなくて苦笑いした。
「リクさん、俺ね、楓を抱きたいんだけどまだ俺の番じゃなくて…。俺ヤりかたも分かんないし、ゲイビとかマジ興味ないし、どうしよう?」
「一回シたなら分かるだろ?同じことをやればいい」
「覚えてないんだよねー。いつの間にかぶっとびそうなくらい気持ちいいから」
「なら抱かれる方で良くね?」
「やーだぁー。俺っちも抱きたい。楓に入れたい」
「楓が抱かれる側の想像がつかねーよ。」
「楓エロいんだよー。すぐできるなら突っ込みたい。」
ルイの雑さに苦笑いして、楓のケツのためにも、と説明してやった。
「まずはローションを買え。ゴムもしろよ。解すのはゆっくり時間をかける。前立腺触ってやったら気持ち良くなれるはずだ」
「前立腺…お尻の気持ちいいところ?」
「そうそう。あそこヤバいよなぁ」
「うん!恥ずかしいくらい声出ちゃった」
「分かるー。」
ルイを現場で下ろして、事務所に戻ろうとするも、心配で付いておくことにした。
スケーターブランドのモデルとしての撮影だが、この日の撮影は大絶賛されていた。本人も真剣で、撮影は巻きで終わった。
ーー
「リク、ニヤニヤしてる」
「愁!ちょっと来い!面白い展開になった!」
デスクでニヤついていたら愁に声をかけられ、その手を取って喫煙所に連行した。
「何?」
「楓とルイがくっついた」
「えぇ!?…わー、すごい!」
愁は小さく拍手して驚いた様子だ。
「いやぁ、楓頑張ったよなぁ。ただ、今からが大変だろうなー!だってルイだぞ?クククッ!」
「まぁ大丈夫でしょ」
「何でそんなこと言うんだよ」
「えー?何でって。ルイとリクそっくりじゃん。だから大丈夫だって」
思いがけない言葉に目を見開く。
「リクも超女の子好きだったし、気分もわかりやすい。素直だし、根っこは真面目。似てるでしょ?」
「似てねーよ!全然!あいつみたいにアホじゃない!」
「アホとは言ってないよ?」
「べ、別に女好きでもねーし。」
「何回お仕置きされてるのかなぁー?」
「ちがっ!あれは、っ、もう!とにかく似てないから!」
イライラしてタバコに火をつけるとそれをそのまま奪われた。愁の唇に目が行き、固まる。
「ほら、分かりやすい。キスしたくなったでしょ」
「ん、したい」
「そして素直。楓は慣れるまで大変だね」
「慣れたのか?俺には」
「慣れたよ」
慣れた、と言われて不機嫌になるのが分かった。まだドキドキしていてほしかった、なんて子どもっぽいことを考えて、やっぱ似てるかもと苦笑いした。
「慣れたけど、ドキドキしないわけじゃない。ほら、まんまと煽られてる。」
「っ!!」
「そしてリクは煽っといて、僕がノると怖がる」
「だって…お前自制が…」
「きかないようにしたのは、リクでしょ」
壁に追いやられて、愁の膝がグリグリと刺激してたまらず肩を掴む。愁はタバコを揉み消して煙を吐いた。
「どうする?」
「お前っ!」
「トイレ?車?それともここがいい?」
囁かれて顔が熱くなる。リクはポケットから会議室の鍵を取った。
「16時まで取ってる」
「へぇ、何のため?」
「たまたまだ…っ、もう、いいだろ?」
我慢できなくて会議室までの道のりが遠かった。施錠して電気も消して噛み付くようにキスをした。
「リクッ、声ダメだよ?」
「分かってる、分かってるけど…っ!」
「泣かないで、ほら、我慢してね」
「何で…今日、優しいんだよ…っ」
「リクが必死だから可愛いなぁって」
テーブルにしがみついて腰をあげる。ゴムのついた熱が一気に中に入ってきて歯を食いしばる。
「ふふっ、よく我慢できたね」
「ーーっ!っ、っ!」
「…誰か来そう。早めにイかせるね」
「っぁ!ぁっ!っく、ぅっ!ふぅっ!」
声は我慢してるけど、この水音とか、肌が激しくぶつかり合う音とか、ガタガタ揺れるテーブルとかが気になって、過敏になる。締め付けるたびに愁のエロい声が聞こえて、頭が沸騰しそうだ。
「はっ、はっ、リクっ、リク」
愁も限界が近いのか、声が漏れて、中の物は大きくなっていく。
ピリリリリ ピリリリリ
「「っ!!」」
愁のケータイが鳴り響く。長らく鳴ると誰かが来るかもしれない。愁はケータイをとって電源を落とす、と思った。
「っ、はい」
『先輩、お客さんが見えていますよ』
「あぁ、取材の?」
『そうです!早くついたみたいで。どうしますか?』
電話から聞こえる篠原の声と、普通に話す愁。なのに腰の動きはラストスパートで、リクは出せない声を必死に押し殺した。
「そうだな、待たせておいて」
『先輩、どこにいるんですか?ご挨拶は…』
「篠原、察しろよ」
「っ!!?」
『え?何をですか?』
「今、お楽しみ中だから。後でな?」
ブツンと切って、愁はリクの首を後ろから噛み付いてドクドクと吐き出した。
「はっはっ、はっ」
「ごめんリク。客きてるから…」
起き上がって愁を見ると、とんでもない色気のままで、腕を引いた。
「約束、何時なの」
「16時」
「まだ15分ある」
「?」
「エロい顔のまま、外に出ないで。」
素直に言うと、愁の顔が真っ赤になった。
「はぁ〜〜…やめてよ。勃つでしょ」
「なんで?」
「…そんな泣きそうな顔しなくていいの。まだそばにいるから。」
頭を撫でられて、あぁ、俺は甘えたかったんだと目を閉じる。
何も話さずただ寄り添ってそばにいる15分は最高の時間となった。
シュッシュッ
消臭剤を撒きながらぼんやりする。もう仕事にならないと、デスクで片付けをした。
「リク…色気撒き散らすのやめてよ。」
「ん…?色気?」
「あぁもう…本当分かりやすいなぁ…。篠原さんも顔真っ赤だし。」
響が呆れたように笑う。篠原は耳まで真っ赤にして知らんぷりだ。
「篠原ー、ごめんな?」
「っ!!も、もういいですから帰ってくださいお疲れ様でした」
目が合うと真っ赤になって早口で捲し立てられ、響と爆笑した。
「先輩もリクさんも節操なしですよ!ここは職場ですよ!?信じられない!」
「だーかーらー、ごめんってば」
「ち、近づいてこないでくださいよ!」
「なんでー?ちゃんと謝りたいから」
「そんなエロい顔して!謝る気あるんですか!」
響は涙が出るほど笑って、リクも調子に乗る。篠原の顎に手を伸ばしてグイッとあげ、顔を近づける。
(やっぱ、整ってんな)
「篠原、ごめんな?」
「〜〜〜っ!!」
唇が触れるか触れないかのところまで近づくと、腰が抜けたように椅子に落ちた篠原に笑って、満足し、帰ろうと振り返ると氷のような顔をした愁がいた。
「げ!!愁、これは、」
「足りなかったみたいだね?」
「ひぃ!」
ギシッギシッ
「ッァアァアーーッ!んぅ!はっはっ、待って、待って、ッァアァア!」
「リク!リク!」
「いやだぁ!もぉ!とって!とってよ!」
乳首をずっと攻められたまま、奥に何度も何度も注がれる。頭がおかしくなるほどの快感を味わって、次の日高熱を出した。
ーー
「あれ、リクさんは?」
「そう。ごめんね、楓。抱き潰しちゃった」
「お盛んですね」
「天然で煽ってくるから困るよ。そうでしょ?」
「え?」
「ルイとリク。似てるなぁってさ。楓も大変でしょ」
楓はパチパチと瞬きした後、盛大なため息を吐いた。
「本当っ!大変なんすよ!!今までの女好きキャラはどこいったんだっつーくらい、俺のこと誘ってきたり抱こうとしたり…」
「まぁまぁ。嬉しい悩みじゃないの」
「…かなり嬉しいっすよ…恥ずかしいですけど」
「あっはは!楓可愛いな!」
「もー、やめてくださいよ!最近いじられすぎて…」
幸せそうな楓をテレビ局に送ってリクに連絡する。
愁:リク、楓も幸せみたい
リク:へぇ。どうでもいい。プリン買ってこい
こちらは腰が痛くて拗ねているが、そんなところも可愛すぎて愁は幸せを噛み締めた。
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