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第11話

 葵が高校時代に興味本位で始めたモデル業は、予想よりも早いスピードでたちまち人気を集めた。仕事を取るためには仕方がないと、所属事務所から無理に枕営業を強いられたこともある。           しかしその後、華々しい芸能界へステップアップすることはなく、なぜか方向転換されたセミヌードモデルへと移行していった。  おそらくそのころから中性的な顔立ちだったこともあるのだろう。ゲイ向けの仕事までも入って来ていた。  当時、既に葵が患っていた精液依存症。そのこともあり、断る理由もなく紙媒体からインターネットに配信される映像の仕事を受けた。  相手の言葉一つで心意を捉え、裏を読むことは苦手だ。社会で働いていると言っても、閉塞的なサービス業で培えるものは限られている。そもそも、言葉の駆け引きが得意ではないと自覚済みだ。  ただ、ヨシに諭したように相手がして欲しいと思うことに徹していた。行動で示せと言われる有り触れた教訓だけに限れば、とても得意だったのだ。しかしそれだけでは足りない。気持ちの良い接客を目指せば目指す分だけ、よけい粘着質に自分だけを見て欲しいというストーカーが増えた。それが煩わしくても、セックスは好きだった。そんな時に業界繋がりで守代から声がかかり、この店で働くことを決めた。  店以外では働いていないナツの画像はWeb上の写真しか一般には出回っていない。  そんな有り触れたもの以外を所持している涼は、ナツとただのスタッフとボーイ以上の関係を持っている。いわゆる恋人関係。  店内での恋愛は禁止されていない。だが、同じ職場の好きな相手が他の男に抱かれているのをひたすら見守ることは、どんなに耐え難いだろう。こんな仕事だから仕方のないことだった。  指定された部屋に行くと、束感のあるマッシュショートの艶めいた黒髪と白い肌がきれいなナツがベッドに腰かけていた。既に本日の処女を奪われているのか、なかなかに色っぽい雰囲気を漂わせている。  

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