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第12話

 畳敷きの和室。その部屋に充満する匂いは、木目調のアロマディフューザーから放たれている。店内で使われるアロマオイルは大抵、催淫作用のあるイランイランだった。深い甘みを内側から発露させるようなその香りは、本能を剥き出しにさせる淫靡さを孕んでいる。  少しほぐしただけで蕩けるナツの中に埋めた葵の自身が締めつけられて眉根を寄せる。男を受け入れることに慣れたアナルが吸いついてきて、とても気持ちが良い。下から微かな笑い声を漏らすナツがまだ平気そうに葵の髪を撫でた。  コスプレオプションで二人が着ているのは、色彩鮮やかな着流し。それはもはや、ほとんど体に引っかけている状態だ。 「……っ、ふぁ、ぁ」 「は……ぁ、いいね。二人共、かわいい」 「ひッ、ぁっ、ア……だめ、だめ……ッきもち」  葵の背後から抱き込む相手が徐々に張りつめた怒張を葵の奥へと突き入れていく。内壁を拡げ奥まで。苦しいのに気持ちが良い。それに反応を示し質量を増す葵の性器が、背後からの動きに連動してナツを攻める。それでは到底足りないのか、下からも締めつけてくる。思わず四つん這いになっている葵の膝が震えた。  ボーイ同士の行為は、相手の体力のことを考えてどうしても温いプレイばかりになるものだ。それでもナツの顔は、薄っすらと朱を帯びて上気している。心なしか声も弾んで聞こえ、どうやら隙間が埋まっているだけでも楽しいようだ。 「葵くん、えろい顔してる」 「っ、ァあ、ぁ、イきそ……」  常に一シャープ分は高いナツの声が鼓膜に届いても、背後からぱんぱんと皮膚がぶつかる音が響いて最奥を抉るような律動に、考える余裕などなくなった。髪が乱れ、上体が傾ぐ。ナツのアナルを穿つ自身すら彼の内部で締めつけられて前後で攻められている。半分は攻めているはずなのに、おかしい。  より一層部屋に満ちる、解放感。 終了時間が近いことを告げるコール音が急に鳴り、ナツが手を伸ばして端末を手にした。肩で息をしながら布団に上体を投げ出した葵は、未だ背後から抱き締める腕の拘束がとかれていない。短い嬌声を発してはシーツを掴み、皺を刻む手を握られる。もう時間がないと言うようにナツが頬に触れるので、分かっていると返す代わりにアナルに力を込めた。  

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