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第28話

 アルコールの類は好きなのに、いつもつい飲み過ぎてしまう。  酔っている自覚はほとんどなく、普通に会話も頭に入っている。それでも元々白い葵の肌は簡単に赤く色付いてしまうのだ。体質かもしれない。  デザートのアイスクリームを食し、少し赤みは引いたと言う二人はそれでも過保護に葵と共にタクシーに乗り込んだ。  例の画像を端末を渡して送ってもらった。その後からじわじわと眠気に襲われ、気付いた時にはもうマンションに到着していた。  翌朝目覚めた時の頭痛だけが変わらずに苛んでいる。だが、これくらいの軽さならば夕方から入っている撮影までには治るだろう。  昨晩の飲み会は葵に報告と警戒を示すものだった。ナンバーがついている者は実績と経験が多いので、自ずと店の問題を聞く役割も担っているのだ。  ざっとシャワーを浴びた後にラフな服装に着替え、端末を手に取る。  画面をなぞり、昨晩涼が送ってくれた例の人物の画像を眺めた。確かにこれは若い。年齢までははっきりと推測できないが、たぶん二十歳前後だろう。特徴という特徴はこれといって見当たらないが、顔だけを覚える。  それから、電話帳に登録している名前へ電話をかけた。蒼穹の広がる十一時四十分。  連続的に続くコール音を聞きながら、冷蔵庫を開けた。そこから直ぐにミネラルウオーターのペットボトルを取り出す。その蓋を開き数口分飲んだところで相手先と繋がった。 「寝てた?」 「そろそろ起きる時間だったので、大丈夫です。どうしました?」 「ここの所会ってないし顔が見たくなってな。今日空いてるか?」 「夕方から講義が入っているので、それ前なら少し時間作れます」  数週間前に聞いた声と違わない一シャープ分高いナツの声が鼓膜に心地良く流れた。

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