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第六話 日常 /2

「ロン」  匠は雀牌を返す。 「立直、一発、七対子、ドラ四」  左隣の寂れた中年の男が、溜め息を吐いて複数の紙幣を雀卓に放り出す。右隣のスーツの男は伸びをして、 「またか。ツイてないな、今日は」  と白々しく呟いた。  自分はついていた。皆が自分の欲しい牌を何度も捨ててきたのだ。  匠は今日、金が欲しかった。親からの仕送り直前、金が尽きそうだったからここに来た。遊びに来たのではなく、稼ぎに来た。  スーツの男はそれを知ってあえて負けたのだ。他の二人が勝たないように、匠が一人勝ちするように打っていた。  裏芸を使える人間のようだった。自分が大負けしてこの男と関係を持つようになった半荘も、何かしら不正をしていたのではないかと匠は思う。  男は未熟な匠を御することを楽しんでいる。  遊戯は面白い。  だが匠は、身体を提供した見返りが大き過ぎて、男と会うことに息苦しさを覚えた。

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