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第七話 狼狽 /1

 金曜の繁華街。  野木崎は珍しく真っ直ぐホテルには行かずに、匠を落ち着いたバーに連れてきた。同僚に馬鹿馬鹿しい迷惑をかけられたので、今日は何があっても会社には関わらないらしい。  同級生とのコンパはほとんどターミナル駅の周辺だったので、匠にとって県庁近くのこの繁華街は初めての場所だった。  これから暗くなるというのに、狭い路地に人間があふれかえっているのが奇妙な気がした。  野木崎はひたすら生ビールをあおり、匠は柑橘系のカクテルを頼む。やや酔ってきた頃に、(.かたわ)らに置いていたスマートフォンが震える。匠が兄の名を確認した途端、野木崎がその電話を取った。  共にいることを知られたくなかったのに、言い訳不可能なほど明らかになってしまった。  ただ、野木崎は現在同行している理由を『県庁近くの印刷屋に行ったついでに繁華街に来た』と言った。それでも野木崎が何を口走るか気が気でなくて、やきもきしながらスマートフォンが帰ってくるのを待つ。 「そんなの自分で調べろよ。エラーの内容全部コピーして、長くてもいいから。それっぽいトコに書いてる対処法全部読め」

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