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第七話 狼狽 /3

 ずっと懺悔したかった。自分が、自らの血で兄に呪いをかけたのだ。酒の力が手伝って、信頼するはずのない野木崎に何故か弁解していた。 「兄貴が心配しないような生活をすればいいんだけど、どうしてもできないんだ。だから、なるべく、俺のやってることは知らせたくない」  野木崎は無表情でそれを聞いていたが、言葉が途切れるとつまらなさそうにため息を吐いた。 「基、めんどくせーな」  わずかに残ったビールを飲み干して、続ける。 「死ねばいいのに」  その物言いが、引っかかった。  物騒な人間だということはわかり切っているのに、聞き流せばいいものを、流せずにかすかにわだかまりになる。 「そういう言葉、やめなよ」 「あ?」  思わず、そう口にする。野木崎は面倒そうに、軽く顔をしかめる。 「俺は流せるけど、冗談でも流せない人いると思うから」  言って、不遜な野木崎を見る。  強烈な人格が出来上がったように見えるこの男に、何を言っても無駄ではないか。  目をそらしてカクテルを手に取る。野木崎も匠の言葉を無視するように新たな煙草をセットした。  だが実際、兄は匠か自身が死ぬまで、匠の憂愁に付き合うのではないかと思う。呪いを解く方法が、全く想像つかなかった。

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