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第八話 非日常 /3
スレンダーはただの栄養不足、髪を伸ばしてベージュに染めているのが少し目立つだけの話。
「あたしと寝るの、イヤじゃあない?」
縁を切る話にならないことに焦ったが、答える。
「体の相性は合ってたと思う」
藤花は、ねだるような瞳で、笑った。
「身体だけの関係でいいから、もう少し付き合って」
彼女は自分のステータスのために匠を身近に置きたいのだろう。罪悪感は減少したが、それで彼女の望むようにするべきなのか、セックスフレンドに成り下がることを止めるべきなのか。自分には何もないからすぐに離れていくと思ったのに、そうならないことに戸惑う。
そこで急に、藤花が声をひそめて背後を指した。
「ねぇ、通り魔だって」
振り向くと番組の合間、ローカルニュースがテレビに映し出されている。
「話中断してごめんね、知ってるとこ映ってたから」
いつも野木崎と待ち合わせるターミナル駅の裏口。その連絡通路で今日の夕方に傷害事件があり、止めに入った男性が手や腕を切りつけられ暴行を受けたとアナウンサーが告げる。
ニュースが終わると同時に、聞き慣れた着信音が鳴る。スマートフォンに父親の名前が表示されている。
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