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お熱編 ~白 side~(裏)1

 悠壱さんが風邪を引いて治った、その三日後。 「ケホケホッ……も、これ……絶対、移った……」 「でしょうね」 「ケホケホッ……」  移ることはないと思っていたのに、俺はまんまと悠一さんの風邪を貰ってしまった。子供たちが風邪になっても移ることはなかったのに、この人の風邪は貰ってしまった。どんだけ強くしぶとい菌に侵されていたのかその身を持って思い知る。こうして俺が高熱でうなされることになろうとは……!  これ、あのキスの所為か? あのキスが原因なのか? 「うあ~……喉、いてえ……」 「扁桃腺が腫れていますからね。トローチ、舐めますか?」 「ん~……」  コクコクと頷いて、悠壱さんからトローチを貰う。舐めたらその間だけ、痛みが緩和されるわけだけど……少しでも楽になるなら一粒でも二粒でも舐めるよ、コレ。 「さて、約束の件ですが……」  ん? 約束の件?  ギシリと俺が寝込むベッドへと手をついて、悠壱さんは俺の耳元へ無駄に形のいい唇を寄せた。 「どう弄ってやろうかと……」 「は!? ……っ、ゲホゲホッ……!!」  驚いて声を上げるも、咳が出て突っ込めない。  それってもしかしなくとも、あん時の? あん時の、「好きなように弄っていいから」発言のことか? 今!? 今すんの!?  風邪で弱っててそれどころじゃないって時に!? 「しかし、弱っているお前を好き勝手に弄ることも忍びないですからね……一応聞きましょう。その身体、拭いてあげましょうか? それとも、自分で拭きますか?」  含みのある聞き方するなよ……本当に弱ってるんだよ……鬼か、此奴は。 「ケホ……じ、自分で、する……」  そう答えると、すでに用意をしてくれていたのか、わざわざ新品かつ肌触りのいいタオルと、ほっかほかの湯がプラスチック桶に。  タオル、家にある物で良かったのに……なんでわざわざ買っちゃうんだよ。くそっ、ふわふわで気持ちいいじゃねえか。  俺が起き上がろうとすると、背中を支えられて助けてもらう。熱が三十八℃を越してしまっているからだろう。しんどい。 「あっつ……」  着ていたジャージと、汗でびしょびしょになったシャツを脱ぎ、上半身丸裸になった俺は、悠壱さんが用意してくれていた濡れタオルを受け取って、身体を拭き始める。あ~、めっちゃ気持ちいい…… 「は~……」  こんな風に声を上げるのを、歳食ったなぁとしみじみ思いながら、腕から順番に身体を拭いていったんだけども…… 「あんま、そうじっと見ないで欲しいんだけど……」  悠壱さんが、すげえじっと見てるのが、落ちつかない。 「何故? 今更でしょう?」  そうだけど。着替えるとこ見られても、恥ずかしくもなんともないけれど。  でも俺は身体を拭いてるだけだし、そうじっと見ることもないんじゃないかと思うんだけど……  やりにくい……。  しんと静かなこの状況で落ちつかなくなった俺は、他愛ない話でもしようかと口を開いた。 「あ、そうだ。露草や椿木は? 飯、もう食った?」 「食べましたよ。今回も華鈴が来てくれたので、食事の方は問題ありません」 「悠壱さんも料理上手いじゃん。俺は寝てるだけだし、わざわざ華鈴姉さんを呼ばなくても……」 「それ、前回のお前にも言えることですね」 「あれは姉さんが……あ、なるほど。おもしろがってんのね。ま、いいや。薬は? 都筑さんが処方してくれたやつ。悠壱さんが預かってくれたんだろ? ありがと。昼のは飲んだけど、夜はまだ飲んでないから……」 「ああ、それならここにありますよ」 「ん……」  薬は嫌いだから、あんま飲みたくないけど、早く治したいし。これ以上華鈴姉さんにおもしろがられるわけにもいかないしな。助かってるけど。  俺は身体を拭き終え、新しいシャツを悠壱さんから貰うと、すぐさまそれに着替える。そして、薬袋を受け取り中身を確認すると……

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