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ラブバードラプソディー 3

 ・・・  昔から。俺は悠壱さんの気に入らないことをすると、彼からお仕置きを受ける。  その大半くらいは、振り返れば俺が悪かったな〜と反省できるもの。怒られても、叱られても、仕方ないって思えるさ。  しかし、これは明らかに理不尽だろってことでもお仕置きを受ける場合がある。今日もそのパターンだ。  もう子供じゃないし、若くもないのに。  いいおっさんなのに。  お仕置きが毎回エッチなやつなのは一体何故なんだ。 「ぅ、あっ……」 「ああ、凄いな……白。ここ、こんなに溢れてる」  溢れてる、じゃねえよこの鬼畜眼鏡。散々刺激を与えておいてイかせないように止めてるんだから生殺しもいいところだ。  一体これがどういう状況かというと。  あれから俺は寝室へと放り込まれた。その寝室のベッドの上で俺が仰向けに押し倒されていて、元々着ていたTシャツを手首のとこまで捲り上げられそれを頭上へと固定される。Tシャツが手錠代わりにされているから俺は身動きが取れない。脚はといえば、別に縛られているわけじゃないから抵抗くらいは出来るけれど、逃げることが出来ないように上手いことそれを割り開いてその間に悠壱さん自身を挿し入れられている。それに、その上から覆い被さる形で冷ややかに見下ろされては逃げられるはずもない。ちなみに、この人は上半身だけ服を脱いでいる。俺は上も下もすっぽんぽんだ。なんだこの差は。  そんな状態で俺は開発された性感帯という性感帯を彼の指や舌、口や歯を使って刺激されまくる。今まで女役でセックスをしている身としては、これで勃たせるなという方が無理な話のわけで。  しかしアナルに指を突っ込まれて中のしこりを擦られては、勃ってる前の方を止められるの繰り返し。おかげで先走りが洪水のようだ。悠壱さんがわざとらしく溢れてる、と言ったのはつまりはそういうことだ。  弄られまくって尖りきっている胸の突起も、すっかり充血して赤くなってしまっている。より敏感になっているそこをまたもや舌で舐めあげられ、俺の身に再び射精の波が押し寄せてきた。 「や、め……んっ、イきそ……ひ、あっ……」 「それはダメ。仕置きにならない」 「んっ……指、それ……やだあっ……」 「啼き方が子供みたいだな」  舌で嬲られる胸の先端を、わざと歯を立てて甘噛みされる。すると、悠壱さん曰く女のようにイってしまう俺。もちろん、射精は許されていない。  一段と荒く激しい呼吸を繰り返す俺に、この鬼畜眼鏡は殺すつもりなのかと問いたいタイミングで口を塞いでくる。もちろん、同じ口で。 「ん、んんうっ……!」  口の中に、少し苦味のある味が入ってくる。舌を舌で絡められると嫌でもその味を感じてしまう。子供たちの前では絶対に吸わないからあの子たちは知らないと思うけれど、悠壱さんは時折一服として煙草を口にすることがある。要はその味。でもおそらくこれは、俺が家に帰る前に吸ったばかりの味だ。 「んんっ……う、わきとか……してないっ……から……ほん、とに……」 「白……私は言い訳が嫌い」 「ほんとっ……だも……んんっ……」  唇から溢れる唾液を顎から舐め取られると、そこでようやく口の中を嬲るのを止めてくれた。  その代わり、見下ろされながら恐ろしいことを吐かれたけれど。 「時代が時代なら、地下牢で縛り上げての折檻だったな。良かったな。優しい夫で」  お前は悪代官か。そう突っ込みたくなるのをぐっと抑え、俺は悠壱さんが嫌いだという言い訳を並べ始めた。 「おれ、は……浮気は……して、ない……そもそもっ、悠壱さん以外とっ……こんな、こと……しないっ……」 「こんなことって?」 「き……きす、とか……っ……せっ、くす……とか……あ、アレだって……」 「ふうん?」  この野郎。そんなのはさも当たり前だろって顔で見下ろして……だいたい、指輪の一つや二つ出たところでここまでするか普通? 昔みたいに変な道具を使われないだけマシだけど、そういう問題じゃねえんだよ。  何より腹立たしいのは、俺が野郎と浮気したと思ってるってことだ! 何で相手が女じゃないんだよ! 俺はゲイじゃないんだぞ!  同性結婚をしている身なのを棚に上げて、沸々と怒りが込み上げてくる俺は、自分の今の状況をほっぽり、悠壱さんに向かって。 「あ、アレだって……! アンタのじゃなきゃっ……誰がっ、野郎のモンを……口で咥えるかぁっ、ばかやろおっ……」  キレていた。キレているのは向こうの方だというのに。  しかし俺が言った台詞が可笑しかったのか、散々冷ややかな目で見ていた悠壱さんがフッと笑った。 「馬鹿野郎ねぇ……そんなことをほざく奴はお前くらいだよ」  そして散々苛められたアナルから指を引き抜かれると、俺の口の中にその親指を突っ込んだ。 「んぶっ……!」 「それで? どっちの口で咥える?」  聞き方がエロ親父だ。親父という響きが似合わない親父だけれど。ナニを? とは言わないけれど。 「ん……ふぁ……」 「上も下もグズグズだな……」  悠壱さんは俺の舌を親指の腹で擦りながら、下の方ではグズグズといった俺のアナルに自身の硬くなったアレを宛がう。いつの間にベルトを緩めてたんだ。おかしいだろ。 「言いひゃたがっ……エロおや……んああっ」 「これで許してやるんだから最後まで付き合えよ」  この最後まで、というのはもちろんこの人の最後まで。  つまり、俺がもう無理だと言っても聞かないということ。  せめて、肉を食ってから備えたかったと、俺は今日買った大量の食材を頭の片隅に浮かべたのだった。

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