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プール編 ~白 side~2

 姉さんの自家用車にて走ること一時間。  子供たち三人は突然のお出掛けに大喜び。対して助手席で頭を抱える俺は大悩み。  姉さんはもうヤケだった。  この日は悠壱さんが仕事で前日から家を空けていて、予定だと夜には帰ってくる話だった。俺の中のスケジュールでは、この日は子供たちと一緒に掃除をして、スーパーで買い物をして、お好み焼きでも作ろうかって予定だったんだけど……掃除も洗濯もほったらかして、書き置きも連絡もせずに家を空けてきてしまったことに内心ヒヤヒヤものだった。  悠壱さんが帰ってくる前に俺たちが帰らなければ、ものすごくヤバい。怒られる。  運転する姉さんの隣で、俺はずーっと引き返すよう説得していた。  でもそんな俺の説得は虚しく。 「あら、結構混んでるのね~。駐車場、空いてないかしら?」 「これはもう、帰れって言ってるんじゃないかな。なあ、姉さん。アイスでも買って一緒に戻ろう? 家に帰りにくいなら俺ん家にいていいからさ」 「嫌よ! 絶対に帰らないわ! 今日はここで一日中遊ぶわよ!」 「ちょ……っと、待って。待て待て待って。姉さんはともかく、俺は悠壱さんに黙って家を空けるとすごーくまずいんだけど……とりあえず、悠壱さんにだけでも連絡を取らせ……」 「白は私より旦那を取るっていうの!? あの人に連絡したらウチの旦那にバレるじゃない!」  確かにな。悠壱さんと姉さんの旦那の弟が仕事で繋がってるからな。すぐにバレるのは間違いない。  でも俺だって命が惜しい。 「姉さん。俺は姉さんのダチだし、姉さんのことがとーっても大事なんだけど、ウチのパパがね。怖いのよ。スーパーや商店街ならともかく大型海水プールってなるとものすご~くまずいわけさ。バレたら三時間正座とかありえ……」 「どうせ貴方へのお仕置きなんてエッチかセックスか×××になるじゃないの! そんなのどってことないでしょう!」 「ちょっ、言い方! あと後ろに子供たちいるから!!」  ×××はダメだろ、×××は!! 「ママ、せっくすって何~?」 「×××って何ー? お菓子ー?」 「ママー、お車、あそこに入れるよ~」  とんでも用語を子供たちが連呼する中、ちょうど一台分の駐車スペースを菖蒲君が見つけて、華鈴姉さんはそこへすかさず駐車させた。  ここまで来てしまったとなればもう諦めざるを得ない。俺は渋々、車から降りて華鈴姉さん、そして子供たちと共に施設の中へと入ったのだった。

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