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プール編 ~白 side~3
大型海水プールとはいうものの、全てが施設内の為、日焼けが天敵の俺にとっては随分と優しい遊び場だった。まだオープンしたばかりのそこは塗り立てのペンキが真新しく、着替えをするロッカーも最新式で盗難の心配も無く使用が出来た。
子供たちは去年買った水着があったから荷物と一緒に一応持ってきたんだけど、俺は引き返すつもり満々だったから、殆ど穿かないそれを家に置いてきた。この当時は戸建てに住んでいたから、庭でビニールプールを出して子供たちと遊んでたんだよな。その時にしか穿かない物だったけど……
「俺の貴重なお小遣いが海パンに消えていく……」
プールの中に入らないのであれば私服でもいいかと思っていたら、施設の中は水着着用が必須とのこと。その上でパーカーなり、シャツなりを着るのはオーケーなんだとか。俺は受付前で販売されていた通常の価格よりも高い水着を購入し、子供たちと一緒に更衣室へと入っていったんだけど……
ここでとある大きな問題が。
「白お兄ちゃん、ママ……来られないのかな……?」
「俺は来て欲しいと切に願ってるんだけどね。姉さんがプールに来られるのは、ちょーっと時間が掛かるかもなぁ」
本物の女よりも美人の姉さんは、性別はれっきとした男で身体の方もまんまそれ。しかしそんな姉さんが何処で着替えるのかという問題が発生した。通常は更衣室からプールへと直通になっているからそこを通れば入場出来るけれど、身体が男の姉さんが女子更衣室に入ってしまったら捕まってしまうし、かといって女のような見た目の姉さんが男子更衣室で女物の水着を着るのも止められてしまうわけで……というか、更衣室前で係の人に捕まったんだけど。
どうにかこうにか事情を説明する姉さんを置いてとりあえず、俺と子供たち三人は更衣室からプールへと入場を果たした。
土曜日だったし当たり前なんだろうけれど、たくさんの人間がプールへ遊びに来ていた。俺たちと同じ家族で来ているところや、若者だけで来ているところ。爺様や婆様で来ているところもあって……ほんとに人が多かった。
はぐれたら大変だと子供たちの手をしっかりと握り、辛うじて空いていたスペースにビニールシートを敷いてタオルや着替え、携帯電話といった荷物を纏めたバッグを置く。清算は後払いで施設内の買い物は全てバンド式のロッカーキーでツケてくれるというものだったから、財布は安心してロッカーに置いてこれた。
ドーナツ型の浮き輪を三人分膨らますと、子供たちと一緒に準備運動をし、充分に身体が解れたのを確認してから子供用プールへと入った。さすが大型施設で幼児用、小学生用、大人用といくつか別れており、目玉でもあるウォータースライダーは俺も滑ってはしゃぎたい気持ちを駆り立てた。残念ながら中学生以上でないと利用出来ないものだったから、大人しく子供たちと小学生用のプールで遊ぶことにしたけれど。
「わーい! 見て見て、ママー! こんなに泳げるよ~!」
「菖蒲君! 競争しよう、競争~!」
「お兄ちゃん、どっちが勝つかちゃんと見ててね!」
子供たちがこんだけ楽しんでくれてるし、それが見れただけでも良しとするかな。後のことは後で考えよう。正座三時間コースは免れないだろうけれど。
と、俺は抱いていた恐れを余所に、呑気に子供たちを見守っていた。
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