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ラン君の憂うつ 4
「そそられても俺、既婚者だし未成年相手には何も出来ないのよ」
そこでキレてる二人の間で守られていた白兄が口を開いた。さすが白兄、ドン引きエロ兄貴に対して動じてない。
月兄と菖蒲さんの肩をポンポン叩きながら、エロ兄貴になおも言葉を掛け続ける。
「お目当ての椿木もただ今風邪っ引きだし、今日のところは帰りなさい。遊びたいならまた来ればいいから」
「母さん!?」
「白さん!?」
その白兄の誘いに、キレてた二人が我に返りつつ同時に白兄を見た。うん。俺もびっくり。エロ兄貴もきょとんと目を丸くさせたよ。
そんでもって。
「へえ……じゃ、アンタ目当てで落としに来てもいいってわけ?」
どっからその自信があんのか、ニヤッと笑った。
対して白兄はやっぱり態度変わらずで。
「いいぞ。俺はだいたい家にいるからいつでもおいで。ただし……」
と、付け加えながらエロ兄貴に……
「俺を落としたいってんなら、二百年ばかし早いけどな……ボーヤ」
あえて挑発するかのように、ニヤリと笑ってみせた。
これが大人の色気なのか、白兄独特のものなのか……白兄とは付き合い長いけど、こうしてたまにドキッとさせられることがある。
そしてこれにはエロ兄貴、そして月兄と菖蒲さんの二人もギョッとした様子を見せた。
「……その台詞、忘れんなよ」
エロ兄貴はそんな捨て台詞を残し、「帰んぞ、おとーと」と俺に声を掛けてスタスタと去っていった。いや、荷物がまだ炬家の中だし。
今日のとこは帰るか、と。白兄に近寄りつつ気になったことを尋ねた。
「なんで二百年?」
「え? あー……百年だとインパクトに欠けるかなって」
せっかくカッコ良かったのに、こういうとこは白兄らしかった。でも煽ったことについては白兄を守ってた二人からガミガミと説教が始まった。
「あんな節操なしにそんな言い方したら駄目だよ、白お兄ちゃん!!」
「ぜってぇ家に来んぞ! 嫌だからな! 俺はあんなの相手すんの!! だいたいなぁ……」
まあ、言い分は最もだな。けど、白兄だってああいった以上は絶対の自信があるからなんだろうけど。
俺が白兄の袖を掴むと、二人にガミガミ言われつつも俺の頭にポンと手を乗せる。それで今度はいつものように笑ってくれた。
「だてに壱パパの奥さんやってるわけじゃないよ。だいじょーぶ」
ー 数日後 ー
「落とせねぇ……」
「もう諦めたら?」
「あれから毎日通ってっけど、誰かしら家にいやがる」
「そりゃいるよ。一家のオカンなんだから」
「酒好きって言うから一番強え蟒蛇殺しをしこたま飲ませたのに潰せなかった。なぜか俺が潰れてた」
「あの人、酒好きだからなぁ……つうか、未成年が酒飲むなよ」
「食いもん好きっつうから、そこに眠剤二錠も盛ったのにぜんっぜん寝やしねぇ。なぜか俺が寝てた」
「若い頃不眠症で市販薬は身体が慣れちゃったって言ってたから……つうか、犯罪じゃねえか」
「この前なんか無防備に腹出してソファで寝てたからよ。あの二人もいねえし、今日こそヤれるとその上に乗っかったら……」
「たら?」
「般若のツラした椿木と見たこともねぇハイスペそうなインテリ眼鏡に摘まみ出された」
「摘まみ出される程度で済んで良かったね」
あれからというもの。
俺はエロ兄貴の愚痴に付き合わされるようになった。椿木から白兄へと標的が替わり、ある意味安心となったけど、これが結構なストレスのわけで。
「あ~……そろそろチンコ爆発しそう。おとーと、俺のシコってくんない?」
「悪いけど、彼氏以外のチンコに興味ねーから」
俺の憂うつは、まだまだ終わりそうにないっぽい。
END.
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