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第一章・4

 だが、明日は特別な日。  明日は、明日だけは一緒に過ごしたかったのに。 「まぁ、いいか」  わざわざ独りで口に出して言ってみる。  これでもうあきらめなさい、と自分で自分に言い聞かせる。  明日は藍が昔、聡士の入学した難関私立小学校に転入した記念日だった。  大好きな、2歳年上の聡士お兄ちゃん。  藍はいったん地元の公立小学校へ入学したが、どうしても聡士お兄ちゃんと同じ学校へ通いたい、と猛勉強したのだ。  記念日、といっても何かあるわけではなく、ただ自分でそう決めているだけだ。  他の誰かがそれを知って、祝ってくれるわけでもない。  ただ藍にとっては大切な日で、いつもこっそり何か特別な事をつくっては、ひとりで自分を祝っていた。  聡士とリンゴをかじってみたり、聡士を川遊びに誘ってみたり、聡士と図書館に出かけてみたり。  そこまで考えて、くすりと笑った。  振り返ってみれば本当に彼の事が、ずっとずっと前から子どもの頃から大好きだったのだな、と。

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