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第一章・5
エスカレーター式の進学校で、大学まで進んだ時に聡士とようやく結ばれた。
体を重ねるようになってからこっち、僕はもしかして彼の恋人になれたのかな、と考えない事もなかった。
だったらいいな、とも思った。
でも、聡士は相変わらずだ。
女の子や男の子をとっかえひっかえしては遊ぶし、藍にそれを隠すでもない。
時が経つにつれ、自分もそんな遊び相手のひとりなのだろうな、とあきらめた。
いや、いっそその方がいいだろう。
その方が、捨てられた時の傷も浅くて済む。
でも、と藍はオルゴールボックスから細い腕輪を取り出して眺めた。
でも、この腕輪をもらった時から僕の彼への恋は始まっていて、たとえ捨てられてもやはり僕は彼の事がずっと好きなのだろう。
波と魚の模様が、小さく細かくたくさん彫り込まれた銀細工の腕輪。
小学校に編入した時、聡士がお祝いにとくれたものだ。
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