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第一章・7

 翌日、出かけようかどうしようか午前中いっぱいかけて悩んだが、予定通りに行う事にした。 「今日は記念日だしね」  藍はそう独り言を言いながら、お気に入りの服を選んで市街へ向かった。  一年間がんばった自分に何かご褒美を、と思い、さまざまな店を巡りまわってみたが、どれもピンとこない。  脳に、心に届かないのだ。  眼は物を映すだけで、意識はただぼんやりと霞がかっていた。  感動する気持ちを失くしてしまっていた。  気持ちが沈んでいる事は自分でも解かりきっていたので、何とかして引き上げようと映画館へ足を運んでみた。  本来なら、聡士と観に来るはずだった映画。  ウィンドゥの中のポスターを外から眺めてみる。  うだつのあがらないドジな中年男が、恋人の危機に奇跡的な活躍を引き起こすラブコメディ。  ありがちな筋だが、熟練の名優がずらりとその名を連ねたキャストが話題になっていた。  観れば絶対に面白いだろうが、館内に踏み込むもう一歩が出なかった。

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