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第二章・1
胸をまさぐられ、布越しに股間を撫でられた。
ホントに男だ、と驚いた声があがり、下卑た笑いに囲まれた。
とにかく、走って逃げるしかない。
高等部の時は、陸上をやっていた。
その脚力をもってすれば、簡単に彼らを巻くことはできるだろう。
だが、今の藍にはただひたすら億劫だった。
指一本動かす気になれないほどの無気力さが、心身のどちらにも絡みついていた。
こんな時、映画だったら主人公が颯爽と助けに現れるのにな。
そんな事をうつろに考えた。
だが、現実はそんな都合のいいものではない。
聡士が現れるはずもない。
聡士。
彼の顔が、脳裏によぎった。
聡士の馬鹿。
あなたが僕をすっぽかしたりするから、こんな事になるんじゃないか、と心の中で拗ねた。
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