13 / 49

第二章・2

 男のひとりが刃渡りの広いナイフを取り出し、藍の頬に当ててきた。 「おとなしくしてりゃあ、手荒な真似はしねえ」  刃の当てられていない逆側の頬を、べろりと大きく舐め上げられた。  分厚い舌がゆっくりと這い、顔にかかる湿った息は、きついアルコールの臭いがした。 「犯らせろよ」  この時点で、すでに手荒なのだが。  銃だけでなくこんなものまでしのばせているところを見ると、やはり堅気ではないらしい。  顔に傷をつけられたり、服を汚されたり破られたりしては面倒だ。  寮に戻った時に、夜勤の管理人に不審に思われる。  藍は、黙って服を脱ぎ始めた。  まさかここまで従順とは思っていなかったらしく、男たちは甲高い奇声をあげた。 「自分で脱ぐぜ、こいつ」 「これって合意? 合意の上、ってこと?」  馬鹿な事を言う、と内心蔑みながら藍は身にまとう全てを脱ぎ捨て、白い素肌をさらした。  ご丁寧に、LEDの小型ペンライトで照らす男がいる。  向けられた光がまぶしく、藍はその表情を失くした顔をそむけた。

ともだちにシェアしよう!