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第三章・1

 藍は男たちが去った後も、しばらく動かずじっとしていた。  瞼を閉じたまま、ぴくりとも動かなかった。  荒い呼吸がしだいに鎮まり、熱く火照っていた体が、心がどんどん冷えていった。  やがてゆっくりと眼を開くと、瞳の中に天高く昇った月の姿が映った。  春霞の中、美しく照る金色の月。 「お月様が、見てた」  ぽつりとつぶやいた。  あぁ、聡士。  彼に見られてしまったような気がした。  醜い痴態をさらしてしまった。

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