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第三章・3

「良い夢を。おやすみなさい」 「おやすみなさい。夜勤、ご苦労様」  これでいい。  何もなかったのだ。  そう自分に念押しして、藍は長い階段を上り始めた。  もう夜中ということもあり、人気はなかった。  時折人影が動くのが見えたが、そういう時は大きく迂回し、顔を合わせないようにしてやり過ごした。  階段を上り、廊下を歩き、聡士の部屋の前までやって来た。  ここが、一番やっかい。  

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