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第三章・4

 藍の気配を感じ取れば、聡士は必ず顔を合わせに出てくるだろう。  なるだけ静かに、気づかれないようにやり過ごそうと藍はよろめきながら歩を進めた。  ようやく4年生の棟を抜け、自室へ向かう階段に足を踏み入れたとき、背後から呼びかけられた。 「よう、おこんばんは」  聡士。  軽い陽気な声が、心にずしりと重く響いた。 「黙って通り抜けるなんて、つれないな。何だよ、お前も出かけてたのか」

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