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第三章・5
振り向いて、返事をしようと思ったのだ。
だが、体がこわばって動かない。
喉が詰まって、声が出ない。
沈黙はわずかの間の事だったが、聡士がいぶかしく思うには充分な時間だった。
「どうした?」
藍はゆっくり振り向いた。
何も言わなかった。
口を開くと、何かとんでもない事を言い出しそうで怖かった。
ただ黙ってにこっと微笑み、手を少しだけ上げて、ひらひらっと振った。
そしてまたゆっくりと、階段を登り始めた。
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