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第三章・10

 妙だな、と一度感じた気持ちはずっとぬぐえなかった。  明日はデート。  なかなか陥ちなかった女を、ようやくものにするチャンス。  そう考えても、聡士の気分はなぜか晴れなかった。  藍。  何かおかしい。  最後に見た、あの笑顔。あの仕草。  見覚えがあった。  付き合いだすより、もっと前。  もっとずっと幼い頃に、何度かあんな顔の藍を見たような。  笑いながらも、泣きだしそうに見える、あの顔。

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