37 / 49

第三章・14

 聡士。  焦点の合わない眼でこちらを見て、何か言おうと小さく震えた藍の唇を、聡士は指先で軽く抑えた。  何も言うな。  そうすると藍は静かに眼を閉じ、後はただ聡士に体を預けて湯を浴びた。  聡士は、藍の体はもとより、口まで開かせてその中にも湯を注いだ。  そっと指を入れ、丁寧に咥内を撫でてすすいだ。  髪の中にまで、乾いて固まりかけた精液の名残があった。  手櫛で何度も梳き、丹念に落とした。  体を清めた後は乾いた清潔なタオルで入念に水分を拭き取り、その軽い体を抱えて寝室へ入った。  パジャマをまとわせベッドに横たえ、毛布を掛けてやった。  そしてようやく、詰めていた息を大きく吐き出した。

ともだちにシェアしよう!