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第三章・17
ごめんなさい。
その言葉はひどくこたえた。
責められ、なじられ、非難された方がよほどマシだった。
子どもの頃からそうだ。
ケンカをしても、それが10割完全に俺の方が悪かったとしても、いつも先に謝ってくるのは藍の方だった。
再び瞼を閉じて寝入ってしまった藍。
寝具に腕を潜り込ませて、その手をとった。
手首には、銀の腕輪。
汚された体を清めながら気づいていた、見覚えのある腕輪。
生まれて初めての、贈り物だった。
誰かのために、何か贈りたいという衝動を抑えきれなかった、あの鮮烈な記憶。
子どもには高価過ぎた品物を、有り金全てをはたいて買った。
そして、それと引き換えに藍の喜ぶ笑顔を手に入れた。
今でもよく覚えている。
純粋な、清らかな笑顔。
どんなものにも代えがたい、宝物だった。
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