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第三章・20
ああ、やめて。
闇の中から伸びてくる、たくさんの太い腕。
顎を掴み、体をまさぐり、脚を大きく広げさせてくる、いやらしい汚れた腕。
やめて、やめて。
助けて。
誰か、助けて。
聡士、助けて。
ふと、力強く手を握られた。
ぐいと引き上げられると、絡みついていた何本もの腕たちがたちまち体から離れた。
誰? 僕の手を引いて、助けてくれたのは。
まぶしくて、顔が見えない。
光はどんどん強くなり、藍は思わず眼をギュッと瞑った。
眼を閉じて感じるのは、緑の匂い。水の匂い。
かすかに風に乗って運ばれてくる、花の匂い。
そして、聡士の匂い。
ああ、やっぱり。
眼を開くと、そこには彼が立っていた。
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