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第三章・21

「おめでとう。藍」  聡士が手を離すと、藍の手のひらには銀の腕輪が残されていた。  波と魚の模様が、小さく細かくたくさん彫り込まれた銀細工の腕輪。 「ありがとう」  手首にはめるとそれはずいぶん大きくて、腕を下ろすと落としてしまいそうだった。  早く大人になりたいな。  そうしたら、いつでもこの腕輪をはめていられるのに。  今は、まだ駄目。  落として失くしたら大変だから、宝物を入れておく箱の中に大切に大切にしまっておかなきゃ。

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