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第三章・22

 一度閉めた宝箱の蓋を、そっともう一度開けてみる。  もう一度だけ、見たいな。  もう一度だけ見てから、宝箱は隠しておこう。  蓋を開けると、そこに入れたはずの腕輪が見当たらなかった。  驚いて箱の中をかき回したり、逆さにして振ってみたりしていると、からかうような笑い声があがった。 「腕輪はここだ。欲しかったら、ここまでおいで」  箱にしまったはずの腕輪は、なぜか聡士が高く掲げた手の中で光っていた。 「やだ。返して」  藍が手を伸ばすと、伸ばした分だけ腕輪が遠くなる。  聡士が、遠ざかる。  追って、追って、ようやく追いついて、銀の腕輪を手に握る。  聡士の手を握る。  楽しげに笑う、聡士。  こちらもすっかり嬉しくなって、にっこりと微笑んだ。

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