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第三章・25
「元気になったら、一緒に出掛けよう。お祝いに、買いたいものがあるんだ」
「ふふ。優しいね。何だか、怖いくらい」
あふれそうになる涙をこらえようと、藍はおどけてまぜっかえした。
「何を買ってくれるのかな? つまんないものだったら、ただじゃおかないから」
「お揃いのさ、指輪を買いたい」
俺がもし、また妙な浮気心を起こしたら、そいつでしっかり繋ぎ止めておいてくれ。
誰より大切な人がいるのだということを、思い出させてくれ。
聡士は、改めて藍の左手の薬指にキスをした。
丁寧に、心を込めて口づけた。
そして、その想いが届いたのか、ついに藍の瞳から涙があふれた。
「泣くなよ、笑ってくれ。ここ、笑うとこだぜ?」
藍は泣いた。
今まで耐えてきた分、思いきり泣いた。
この体の、心のどこにこんなにたくさんの涙を隠していたのかと思うくらい泣いた。
聡士は、そんな藍を抱きしめ、ずっと背中を撫でていた。
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