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第4話
彩吏side
彼の名前はなんだったけな…作品の下に書いてあったけど見てくるの忘れちゃった。今度会った時にでも聞いてみよう。そんな風に軽く考えていた
僕は絵を描くこと以外は全て苦手だ。
コミニケーションだって上手くなくて…、いつも一人で過ごしていた。幼馴染を除いては………
「彩、今帰り?一緒に帰ろ?」
「むいちゃん……。僕…」
「あれ?またやっちゃった?」
「…うん」
「大丈夫だよっ。なんとかなるって。ね?」
「……うん」
「う〜ん…。甘いものでも食べに行こっ。元気出してっ」
「…あり、がと」
彼はむいちゃんこと、御天 無生枷(みてん むいか)。自由に生きてほしいと言う願いが込められたいい名前だ。生きる枷が無い。名前は体を表すとはよく言うもので、彼はとても自由奔放で天然、末っ子気質だった。
僕、神遥 彩吏(かみはる いろり)は、むいちゃんの自由さがとても好きだった。
二人でケーキバイキングに行くと、むいちゃんが僕の好きなナッツ系のケーキを持ってきてくれる
「これなら食べれる?」
「うん。……ありがと」
「甘いもの苦手だもんね。付き合ってくれてありがとっ。ここ、アイスが美味しいのっ。あとで一緒にクルクルしよ?」
「……うん。…いいよ」
「わーい。ありがとっ」
目の前でパクパク食べているむいちゃんを見ながら紅茶を飲む。珈琲のカフェインは僕の体に合わないから…。逆にむいちゃんは紅茶が飲めないみたい。
アイスも二人でクルクルして、ソフトクリームを作り満足した。時間になって外に出る。そのまま帰るのはちょっと寂しくて、無意識に引き留めてしまった。むいちゃんは何も言わず手を引いてくれて、カフェに入る。飲み物だけ注文してゆっくり話を始めた…。
「最近、満生(みき)がね。反抗期なの」
「みーちゃんが?……みーちゃん、…反抗期、無さそうだったのに……」
みーちゃんこと満生(みき)は、むいちゃんの十個下の弟。満ち足りた生命…。素晴らしい意味の名前だ。彼らの両親は本当に二人のことを愛しているだなぁって思う。決して僕が愛されてこなかったと言うわけではない。ただ、出来の良い兄弟が居るから気後しているだけだ。
僕の兄は何もかも完璧で、いつも比べられてきたから…。正直苦手な印象しかない…。むいちゃんたちみたいに、仲良くしたかったのになぁ……
「彩葉(いろは)さんとは上手くやってるの?まだ、怖い?」
「…………まだ、………怖ぃ……」
「そっか…。仲良くなれると良いね」
彩葉は僕の五つ上の兄。冷たい目が印象的なちょっと怖い人…。人に厳しく自分にはより厳しくみたいな天才だ。だから怖くてあまり話した事も無かった。今は僕が一人暮らしをしているから、実家暮らしの兄とはあまり会わない。
それだけで、少し息がし易くなった気がした…。環境が変わるストレスはあったけど、慣れて来れば気楽でよかった。発情期時だけは困るけど…。
むいちゃんも僕もオメガ。ただ、番もち。むいちゃんの番の人は優しくてかっこいい…。
僕の番は兄だった…。僕が学校で初めてのヒートの時、集団レイプをされたと知った途端、強制的にヒートにさせる薬を飲まされて、首を噛まれたのだ。
「みーちゃんはβだっけ?」
「うん。だから安心だねっ。僕みたいに辛くならないから…」
「そっか…。発情期………。むいちゃん、……そろそろ、じゃなかった?」
「うん。今日迎えにきてくれるって」
「そっか」
そんな話をしていると、カフェのドア鈴が鳴り感嘆の声が聞こえる…。おそらく、むいちゃんの番だ。名前は、水無月 翠華(みなずき みか)。糸目だけど、視線だけで優しい人だと分かる。
翠華さんは僕たちの一つ上で、良く面倒を見てくれる。翠華さんがきた事で誘発されたのか発情期に入ったむいちゃん。お姫様抱っこをされて家までお持ち帰りされてしまった。お会計をしようとすればもう終わっているみたいで、また翠華さんに奢られてしまった…。
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