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第5話
彩吏side
その夜、僕もαに会ったせいか発情期になってしまった。戸締りをして布団の中に閉じこもる。Ω特有の香りが漏れる事はないが、他のαに触られた時の拒絶反応は酷かったから、それ以来その恐怖で発情期の時は家に閉じこもるようにしていた
「…欲しい…。いやだ!…いらないっ!!…はぁ……欲しぃ…。欲しぃ……。はぁ…いらないってばっ!!…はぁ…はぁ……。やだっ、やだぁ……。いら、いらなっ……」
精液が欲しいと本能が、そんなもの要らないと理性が……。結局勝つのはいつも本能…。気付けば薄着で靴も履かず裸足で飛びたし家の近くにあるゲイバーに駆け込む。
もともと住んでいる部屋のセキュリティーは高いが、生活範囲の治安は良くないのだ。
その証拠に家の近くには風俗店の通りがあり、飲み屋も多くラブホも立ち並ぶ。ここは夜の街として有名だった。
ゲイバーに行けば僕のことを知ってるマスターが適当に後腐れなく性癖に歪みの少ないαを当てがってくれる。お昼から何も食べてないから、えずいても吐くものは胃液だけ…。酷い頭痛と吐き気を耐えていると、そのうち体が楽になる…。
ぼんやりした頭では理解出来ないαの彼の顔は少し悲痛そうにしていた。精液が体の中に入ったことで一時的にヒートの症状が軽くなった…。
「番もちのオメガなんて初めて抱いたよ。大丈夫かい?」
「……うん。……迷惑、ごめんね……。ありがと…、ヒート、らく……なったぁ………」
「意識飛びそうだね。とりあえず綺麗にしてあげるよ」
「……あり、……と……」
次に彼に触れられた時にはもうすでに意識を失っていた…。ただ覚えているのは優しい低音と、優しく頭を撫でてくれた大きくて温かい手だけだった……。
目が覚めるとベットに一人だった。…身体、綺麗になってる。彼がやってくれたのだろうか。体を起こしぼんやり座っているとドアが開いてマスターの花風 薫(かふう かおる)さんが入ってきた。手には胃に優しそうな卵粥。出汁の香りが食欲を唆る。
「大丈夫かい?」
「……はい。…いまは」
「食べられそうなら食べてね。…昨日の子。今日もヒートが辛いなら相手してくれるって。どうする?」
「………迷惑じゃなかったら…。お願い、する…」
「なら連絡しておくね。…怠いかい?食べさせてあげようか」
「…だい、じょぶ……」
「ゆっくり休みな…」
そう言って頭を撫でて部屋を出て行った。年は兄さんと一緒のβだ。αに見間違えそうな綺麗な顔に高身長。成績も運動も結構出来たと聞いた事がある。よくαと間違えられて声をかけられると言っていたのも、きっと本当のことなのだろう。
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