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第7話
想side
彼に投げかけられた言葉は全て…。苛々する。俺だってこんな絵が描きたかったわけじゃない。もっと本当は…。そう思うほど虚しく、心が沈んで荒れていく……。彼ともう一度話せばこの苛々は無くなるのか…
初めてもらった賞。嬉しくないわけじゃないでも、心は納得出来なかった。自分の中ではそんなに上手くいってなくて、期限が迫ってて、賞は諦めていたのに…。俺の絵が認められたんだそういって無理矢理に納得させた心を簡単に暴かれた。
「クソ餓鬼…。今に見てろよ…」
思わず壁を殴って手が痛くなった。それからしばらくは彼に会えなかった。どれだけ探しても見つからないのだ。探すだけでも苦労するのに相手の名前は知らないし、特徴を聞かれてもあまりに話した時間が短くてよく思い出せなかった。
「な〜に、イライラしてんの〜?」
「うっせぇ…」
「あらら〜⁇ 本当にご機嫌斜めー?」
「何の用だよ」
おちゃらけて声を掛けてくるのは柳瀬 鈴(やなせ りん)。高校からの友達だ。俺のことを時々揶揄ってくる。油絵専攻で時々賞をとったりしてる。俺よりも多分名前が売れてて…。
「誰に何言われたー?」
「知らねぇ…。変な奴に、絵を……。いや、心の中を暴かれて気分が悪りぃ」
「んー?どんな子ー?」
「すげー、変!………浮いてた…」
「なんとなく分かったかも。会いたい?」
「嗚呼…」
偽ることばかりの俺が唯一気を許している友人。口が悪いことだって鈴しか知らないし、鈴にしか相談したことなんてない。……俺が本当は水彩画じゃなくて、油絵が描きたいこと。道具は何も揃えてないが、いつか、油絵を描いて賞を取りたい
イライラする。上手く絵が描ける気がしない。だから今日はずっと石膏デッサンばかりしていた。でもどれもこれも上手く描けず投げ出した。
「あー、やーめたー。描けねぇーし」
「おつかれー。なら俺も帰るかな〜。久しぶり一緒に食べに行かない?」
「…行く。奢れよ」
「えー?俺の奢りなのー?まぁ、いいけど」
そんな会話をしながら帰路についた。下らないことを喋りながら頭の中では彼の言葉が嫌なほどループしていた…。彼の声がこびりついて剥がれない…。嗚呼、本当に、嫌になる。
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