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4 今泉剛毅

「あ……痛っ! いたたた…… 」  足もどこか捻っているのか、顔を歪めた。 「すみません、ちょっとだけでいいんで肩……肩を貸してください」 「………… 」  申し訳なさそうにそう言われ、溜息をつきながら靖幸は肩を貸してやった。 「俺の家はここからすぐだから、一緒に来い。手当てしてやる」  いつも元気すぎて煩いくらいで、笑顔しか見たことのなかったこの体育教師が苦痛に顔を歪めているのがちょっと面白く、肩を貸してやりながら思わず出てしまった言葉に自分でも驚く。  ポカンとして見ているマスターに飲食代を払い、体育教師に肩を貸してやりながら家まで歩いた。  今日は大人しいんだな……心の中でそう思いながら、自分のアパートの部屋の鍵を開けた。  靖幸は部屋に体育教師を招き入れると湯を沸かし、名前を聞いた。 「さっき剛ちゃん、と聞いたんだが、お前名前は?」 「あ、今泉剛毅(いまいずみごうき)です」  ふぅん……と興味なさそうに返事をし、テキパキと救急箱を取り出し剛毅のTシャツに手を掛けた。 「え? 何です?……あ! 自分でやりますから!」  靖幸におもむろにTシャツを捲り上げられた剛毅は、慌てて自分でシャツを脱ぎ、手渡された濡れタオルで体を拭く。 「………… 」  少し背を丸めぎこちなく体を拭いている剛毅をジッと見つめて、靖幸は口を開いた。 「ちゃんと鍛えていい体してるのに……勿体無い」  靖幸の呟きに、剛毅は笑う。 「はは……そうですよね。喧嘩の仲裁に入ったくせに、やられまくりですもんね。すみません」  申し訳なさそうに頭を掻き、腕を上げる。その上腕に擦り傷ができていることに気が付いた靖幸が腕を取り、優しく摩りながら手当をしてやった。 「あの……違っていたらすみません。俺の勤めてる学園の警備員のかたですよね?」  聞かれて、何だ気づいていたのか、と思い靖幸は頷き、改めて自己紹介をした。そして話しながら「制服じゃなかったから最初はわからなかった、警備の人なら自分が助けに入らなくても大丈夫だった」と剛毅は笑った。  ……なんだろう?  靖幸はこの目の前にいる剛毅を見ていて、不思議と見覚えのある顔だと感じていた。学園内ですれ違った時もチラッとそう思ったのだが、気のせいかと思っていた。でも今ここで改めて顔を見ると、やっぱり知った顔だと感じる。 「あ……? ちょっと……あっ! 大丈夫です。あ、もう大丈夫ですから……待って、あっ! 自分で塗ります!」  靖幸は記憶を遡りながら、無意識に剛毅の脇腹の傷にも軟膏を塗りたくる。どこで会ったのか? 何で見覚えがあるのか? 考え込みながら、黙々と剛毅の体を撫で回していた。 「ちょっと!……や! 靖幸さんっ! ストップ!」  突然手首を強く掴まれ我に帰る。顔を上げると目の前に真っ赤な顔をして息を荒げている剛毅の姿。 「………… 」 「じ、自分で薬塗れます……から」  慌てて靖幸から体を背け、シャツを着ようと手に取る剛毅だったが、怪訝な顔をした靖幸に肩を掴まれ前を向かされてしまった。 「……なんでお前、勃ってんの?」

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