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8 ホテルの一室で

「久しぶりだから凄い興奮する……」  とあるホテルの一室。  先程の安田が下着姿の剛毅をベッドに縛り付けていた。 「どういう風の吹き回し? 剛君、俺NGじゃなかったの?」  ニヤニヤしながら、既に身動きの取れなくなっている剛毅の足元に跨った。 「あ……そっか。それ付けてたら喋れないよね……ふふ。でも取ってあげなーい。大丈夫だよ、安心してね。今日はあんまり痛くしないから」  ボールギャグを噛ませられ、おまけに目隠しもされた剛毅は、ただただされるがまま体を少しだけ捩った。  何であの人がいるんだ──  剛毅はいつものように帰宅途中にマスターの店に立ち寄った。  毎週末、店に寄っては寂しい時を埋めるように優しそうな相手を見つけて朝まで過ごす。でもあの一件があってからは靖幸の事が頭を離れず、そんな寂しさなんかどこかへ消えてしまっていた。  今日のこの日も、何となく店に立ち寄っただけで相手を探しに寄ったわけではなかった。いつもと同じ、何でもない一日を終えようとしていただけだったのに……  店のドアを開けて目に飛び込んできたのは靖幸の後ろ姿。隣にはあの安田が馴れ馴れしく靖幸に寄り添っている。靖幸が安田に狙われているのは一目瞭然だった。心臓がドキドキと跳ねる。それでも剛毅は平静を装い、背後から二人に近付き話しかけた。  見たところ、靖幸は今がどういう状況かわかってなさそうだった。それでもとにかくこの安田が靖幸に手を出しそうな事実に我慢がならなくて「俺が相手をする」と自ら名乗り出てしまった。  安田とは一度だけ寝たことがあった。  マスターの店で初めて安田に声をかけられた剛毅は、大人で紳士的な態度の安田にすぐに打ち解け、好意を持った。  この時には、何度かこの店で意気投合した見知らぬ相手と夜を共にしたこともあったし、これといってトラブルもなかったので剛毅はすっかり安心していた。でもホテルに入るとすぐに安田の態度が豹変した。剛毅は初めて精神的にも肉体的にも痛い目にあい、しばらくの間マスターの店にも顔を出せないほどだった。  安田は人が苦痛に顔を歪めるのを見たり、虐め嬲ることに興奮を覚えるタイプの人間。そんな人間が靖幸に気安く話しかけ、ましてや狙っているなんて剛毅にとって許せる行為ではなく、思わず考え無しに自ら安田を誘ってしまった。 「……ねえ、そんなにあの美人に俺が近づくのが嫌だったの? 剛君俺の事嫌いでしょ?」  ゆっくりとした口調で、剛毅の耳元に唇を寄せ話す。 「あ……違うね。嫌いだけど気持ちいい事は好きなんだよね。酷くされてもほら、もう勃ってきた。お前はほんとどうしようもない子だね……」  クスクスと笑いながら、体中に巡らせたロープによって強調されている剛毅の股間に手を乗せ、芯を持ち始めているペニスを下着越しに優しく撫で回す。  そして息を荒げていく様子を安田はうっとりと見つめた。

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