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10 不快

 パン! と部屋に乾いた音が何度も響く。その度に剛毅は声を殺し小さく呻いた。何度も何度も安田に叩かれた尻は赤く染まり、見るからに痛々しい。 「や……安田さん……お願い、やだ……痛いの……やめて、お願い…… あっ……んっ、やだ……やっ…… 」  枕に突っ伏したままの剛毅が消え入るような声で懇願する。その声に我に返った安田の動きが止まった。 「……あ、ごめんね。今日は痛くしないって言ったっけ。剛君のお尻、やっぱり俺の好みなんだよな。ついつい叩きたくなっちゃうんだよ」  赤く腫れた尻を優しく撫でられ、剛毅はヒリヒリとした刺激と安田の手のひらの冷んやりとした感覚にゾクッとする。苦痛と共に襲ってくる僅かな快感、その狭間に自然と涙が溢れてしまう。 「ふぅ……んっ、ん……や……やだそれ……」 「こっちはいいでしょ? やだって言っても好きでしょ?」  後ろから回された安田の手には小さなクリップみたいな物が握られている。抱え上げられた剛毅の胸にその手が触れた。 「ひぁっ!」  遠慮なく両方の乳首をクリップで挟まれ、剛毅の体が刺激に跳ねる。細いチェーンで繋がれた小さなクリップ。乳首の間で揺れるそのチェーンを安田は楽しそうに指先でゆらゆらと揺らした。 「すぐにジンジンしてきて感覚がなくなるからね。そして外した時がまた気持ちいいんだ……あとこれも」  革製の首輪。これもチェーンが垂れていて、首に装着するや否や安田はクンッと引っ張り剛毅を弄ぶ。後手に縛られ膝立ちした状態の剛毅は安田に首輪のチェーンを引っ張られるたびにバランスを崩しそうになるのを堪えた。 「じゃ、俺のを元気にしてくれるかな?」  剛毅をまた横たえると、顎を捕まえ親指を突っ込み、強引に口を開かせる。胸元に跨り、自分のペニスをそこへ捩込み腰を揺らした。 「いい……気持ちいいよ……剛君、苦しい?……はぁ……ほらもっと……もっと喉開いて……奥まで咥えて」  剛毅はえずきそうになるのを堪え、苦痛に目を瞑る。その様子を見て安田はにやりと笑い、剛毅の頬を叩いた。 「あの美人のもこうやって咥えたい? 無理矢理突っ込まれたい?……あ、それとも突っ込みたい?」  意地悪くそう聞かれ、剛毅は安田の滾ったペニスを咥えたまま小さく首を振る。  そんな事、考えてない……それに、安田に気安く靖幸の事を話されるのが猛烈に不快だった。 「あ? どうしたの? 剛君が俺の事睨むなんて意外だなぁ。俺が彼の話をするのそんなに気に入らない? なんだか妬けちゃうよ。ほら、俺だけを見て……」  安田は剛毅の口からペニスを抜くと、両手で頬を優しく撫でながら舐め回すようにキスをする。 「ふぅ……うっ……ぅ…… 」 「なんだよ、泣くなよ……ほら、今日は俺、優しくしてやるって言ったろ? 楽しませてくれよ。可愛いケツよく見せろ」  再びうつ伏せにされた剛毅は、言われるがまま腰を浮かせ安田に突き出す。 「安田さん……手、解いてほしい」  後手に縛られたままだから、自分を支える事が出来ずに突っ伏しているため胸や顎が痛かった。 「えぇ?……しょうがないなぁ。じゃあ解いてやるから自分で動いて解してごらん」  手は解いてもらえたものの、安田のローションを纏った指先がゆっくりと後孔へと侵入してくる。でもその指先が中途半端な位置でピタリと止まる。剛毅は言われた通りに四つん這いになり、気持ちのいいポイントを自ら探るようにして腰を揺らした。 「はあぁ……あっ……あっ……あぁ……」  胡座をかき指を突き立てているだけの安田は、目の前でゆらゆらと前後する剛毅の尻を見つめる。自分の指がぐちゅぐちゅとヒクつく後孔に出たり入ったりを繰り返すのを眺め目を細めた。 「もういいや。自分で挿れろ」  十分に解れた剛毅の後孔は安田の指が抜けてもヒクヒクと口を開く。一度だけそこをペロリと舐め上げると安田は剛毅の首輪のチェーンをグイッと引っ張り自分の上へ座らせた。 「んんっ……安田さん、む……無理……あぁっ……あっ 」 「早く挿れろよ。入んだろ? もったいぶんなよ」  安田の上に後ろを向き跨るように腰を下ろす剛毅は、ゆっくりとペニスを当てがい咥え込んでいく。  プチュ……と卑猥な音を立て、安田のペニスは根元まで剛毅に飲み込まれた。それと同時に乾いた音が部屋に響いた。 「や……やだ、叩かないで……あっ! 痛い……んっ……ん、動くから!……んっ! お願い、待って……」  やっぱり安田は優しくするといいつつも、剛毅の泣きそうな声が聞きたくて無意識に手をあげる。同じ場所を執拗に何度も何度も引っ叩かれ、剛毅は抵抗しながら声を上げた。

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