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12 警備室

 一人残されたホテルの部屋で、剛毅はベッドに横たわり放心している。  拘束された手は解いてもらえたものの、散々後ろから安田に突かれ、これでもかってくらい尻を平手打ちされ、何処もかしこも赤く腫れ上がってしまっていた。 「痛え……くそっ……」  のそりとうつ伏せに体勢を変えるも、クリップを挟まれていた両乳首もヒリヒリと痛む。首輪に繋がれたチェーンが乾いた音を立て胸の下で絡み合い、苛々しながらそれを手で払った── 「んぁっ! あっ……あっ!……んぐっ!」  安田は剛毅を後ろから犯しながら、首輪のチェーンを自分の方へとグイグイ引っ張った。その度に剛毅は仰け反らされ、喉を絞められる感覚に意識が遠のいた。半分ボーっとしながらも、激しく突かれる事でどうしても声が漏れる。その泣き声に近い喘ぎ声が堪らなく可愛いと安田は満足げに剛毅に言い、更に首輪を引っ張った。  剛毅を騎乗位にさせると、安田は乳首に付けたクリップを乱暴に外す。引っ張られ続けた剛毅の乳首はだらしなく前に突き出し、そこをまた指で執拗に摘み上げ、その刺激だけで剛毅はまた精を吐き出した。  今日は優しくするからと言っていた通りこれ以上の事はされずに怪我もなく、今回は剛毅はちゃんと意識がある状態で事を終えた。そして先にホテルを出る安田を見送ることができた。  一人になった剛毅はまだ僅かに熱を持ち疼いている自分のペニスへ手を伸ばす。  バーで安田と靖幸の後ろ姿を見た時、頭に浮かんだのは安田に痛めつけられている靖幸の姿だった。それは剛毅にとって絶対に許されないこと。靖幸への興味を逸らすために自分から安田を誘ったことに後悔は無かった。  それでも、あんなに嫌悪していた相手に何度もイかされ、痛めつけられることに快感を覚えてしまう自分の性癖には嫌気がさした。 「………… 」  裸の自分をジッと見つめる。喧嘩の仲裁に入った時にできた脇腹の痣がまだ薄ら残っているのに気がつき、そこに手を這わした。あの時靖幸が直接触れた痣……手当てのために撫で回された感触を思い出し、その痣を撫ぜながらもう片方の手で再度頭をもたげ始めた自分のペニスを緩く扱く。 「あ……んっ……」  散々吐き出したはずの精液が、懲りずに再びこみ上げてくる。勢いなくダラリと垂れたそれをティッシュで拭き取り、溜息を吐いて目を瞑った。  休み明け、体の痛みがひかないまま剛毅は学園へ向かった。  なるべくなら今日は靖幸と顔を合わせたくない。いつも廊下を巡回する時間と外に出て行く時間は把握しているから、できるだけ出くわさないように、気を使った。  それでも待ち伏せていたかのように放課後になると靖幸とばったり廊下で出くわしてしまった。剛毅は内心ビクビクしながらすれ違いざまに会釈をし、そのままやり過ごそうと早足にすれ違うつもりだったのに、思いっきり靖幸に腕を掴まれ引きとめられてしまった。 「この間はどうも……」  そう言う靖幸の表情が心なしか怒っているように見える。剛毅を見る鋭い視線に心臓の鼓動が早くなる。 「ちょっと話があるんだけど。終わったら警備室に来いよ」  剛毅の耳元で小声でそう言うと、そのまま靖幸は行ってしまった。  話とは何だろう……考えるまでもなく、先日の安田の事だとは察しがつく。仕事を終えてこのまま無視して帰ってしまってもいい。それでも靖幸に誘われて二人になれる事にどうしようもなく嬉しく思ってしまう。剛毅はいつも以上に急いで仕事を終わらせた。  警備室へと近づくにつれ、やっぱり気不味いのと、どこまで靖幸が勘付いているのかが頭を過ぎり足が重くなる。少し前までは浮かれていたはずなのに……自分の単純さと馬鹿さ加減にほとほと嫌になった。  殆どの生徒はもう学園から出ているので今廊下にいるのは自分しかいない。気持ち悪いくらい静かな校内を進み、とうとう辿り着いてしまった警備室の前で剛毅は足を止めた。

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