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14 手当て

「……マジかよ」  無理矢理上半身を脱がせた剛毅を机に押さえつけながら、靖幸はその体を見て唖然とした。  首には赤い擦れた痕がぐるっと残り、肩や胸元には無数のキスマークと歯型。乳首にはご丁寧に絆創膏を貼っている。 「何すんだよ!……見んな!」  真っ赤になって剛毅が睨む。それでも全く靖幸は動じず、寧ろ面白いものを見たと言わんばかりに笑みを浮かべた。 「もしかしてこういうのが趣味なのか? でも化膿するといけないから手当はちゃんとやらないと……」  剛毅を押さえつけたまま、靖幸はそっと傷に指を這わす。 指先の感触に剛毅は思わず身震いをした。  まじまじと靖幸に見つめられ体を撫でられ、自分に注がれるその視線に嫌でも息が荒くなる。剛毅は無意識に唇を噛み締め、荒くなる息を堪えた。 「なんでここ、絆創膏貼ってんだ?」  靖幸は不思議そうに剛毅の乳首にも指を当て首をかしげる。押さえつけられていた体ももう解放されているはずなのに、剛毅は起き上がる事なく机に寝たままで恥ずかしそうに顔を逸らした。 「乳首……弄られすぎて……服に擦れて、痛いから……」  消え入りそうな小さな声でボソッとそう話す剛毅をジッと見下ろす靖幸が、緩々と円を描くように乳首のまわりを撫で始めた。  他意はない……  他意はない……  自分にそう言い聞かせながら、靖幸の思いがけない指の動きに体を捩る。それでも敏感なそこを弄られればどうしようもなく下半身が熱くなってしまう。 「あ……あの、や……やめてください。痛いから」  靖幸の手を掴み目を潤ませて懇願する剛毅の姿を見た靖幸は、ドクンと胸が騒めいた。  明るくいつも笑顔で元気。きっと生徒からも信頼され人望のある剛毅のこんな姿。裏の顔を垣間見た靖幸は、一気にこみ上げてきた加虐心を抑えることができなかった。  裏の顔──と言っても、靖幸は剛毅の更にもう一つの顔も知っている。 「あんたゲイなんだろ? 俺に触られてどう思う?……感じる? 息が荒いが、ここ……しんどいだろ?」  靖幸が触れるまでもなく、剛毅のそこはジャージを押し上げ固く張りつめていた。 「んっ……!」  靖幸はそっと剛毅の股間に触れる。思いもよらない靖幸の行動に、剛毅は驚いて体を跳ねさせ体を丸める。その姿を見てゲラゲラと声をあげて靖幸は笑った。 「か……からかうの、やめてください!」  立ち上がってしまった股間を隠すように両手で押さえ剛毅は睨むが、こんな風に笑う靖幸を見るのは初めてで内心とても驚き動揺した。 「は? 別にからかってないよ? ほら、薬塗ってやるからこっち座れよ」  机から降り、剛毅はまた素直に椅子に座る。いつの間にか用意してある救急箱から靖幸は軟膏を取り出し、剛毅の体に無数にある擦れた傷に塗り始めた。 「………… 」  靖幸に優しく軟膏を塗られている。軟膏でヌラッとした靖幸の指先が滑らかにうねりながら自分の肌を這うのを剛毅はジッと見つめる。少し骨ばった男特有のゴツゴツした手でも、自分のそれとはまた違って色が白くて色っぽく感じた。  そうだ、安田の手と似ているな……  そんな風に思った途端、靖幸の手の動きがとてもいやらしいものに感じてしまった。 「あ……あっ……」  靖幸の指先が乳首を掠め、思わずビクッと反応してしまう。股間を押さえている手に力が入った。

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