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24 主導権

「安田なんだろ?」 「………… 」  靖幸に軟膏を塗られ、安田と会ったのかと問い詰められる。剛毅は靖幸には関係のないことだと言わんばかりに口を閉ざすから、どんどん靖幸の機嫌が悪くなっていった。 「なぁ、何で黙るんだよ! おかしいだろ? 何とか言ってみろ」  軟膏を塗る手が乱暴に動くのを剛毅はジッと見つめる。靖幸がこんなに自分に対して感情的な態度をとるのが不思議で、そして嬉しく思った。剛毅の知っている靖幸は、昔からクールで周りには無関心、ムカつくほど澄ました人間だったから……そんな靖幸が自分に向ける感情が、たとえ怒りの感情だったとしても剛毅にとっては嬉しいことだった。 「……?! ひっ……! 痛いっ!」  突然ギュッと乳首をつまみ上げられ、思わず大きな声を上げた。剛毅の乳首を抓ったままの靖幸が怖い顔で睨みつける。 「安田と会ってたんだろ? またこんなに痛めつけられて……お前は痛い事が好きなのか? そういうのに興奮するのか?」  ギリギリとつまむ指に力が入る。流石にこれ以上抓られるのは剛毅も辛く、靖幸の手をばっと払った。 「ちょっと! 痛いじゃないですか! やめてください!……痛いのが好きなんて……そんなわけないでしょう! それに、俺が誰と会ってようがあなたには関係ない」  別に痛いのが好きなわけじゃない。虐げられるのは好きじゃない。  好きじゃないけど……  でも、快楽の伴う痛みは嫌いじゃない。  息を荒げ、靖幸を睨む。靖幸はそんな剛毅をじっと見て、そして蔑むようにクスッと笑った。 「やっぱりいいんじゃないか。お前、勃ってるぞ? それともあれか? 俺が弄ってるから興奮するのか? ほら、睨んでないで言ってみろよ。もっと弄ってくださいってさ……」  確かに、密かに憧れていた靖幸に触れられて、興奮しているのは事実だった。でもそう言って剛毅を弄る靖幸の顔が、散々自分のことを嬲り虐めてきた奴らと同じようにも見えてしまい、悲しくもあった。 「……嫌です。違います……んっ、でも……気持ちがいいです」 「………… 」  ツツ……と靖幸の指が剛毅の腹をなぞる。    きっと興味本位。靖幸は別に自分を性的に見てるわけじゃない。そうわかっていても、やっぱり触れてもらえると嬉しくて、気持ちがよくて熱が篭っていくのがわかった。  剛毅は今度は自分からズボンのベルトを緩め、勃起して窮屈になっていたそこを解放した。  一瞬ギョッとした表情を見せた靖幸は剛毅から目をそらす。すかさず剛毅は靖幸の手を取り、自分のペニスへその手を招いた。 「ねえ、気になるんでしょ? 俺……痛いのは好きじゃないけど……でも靖幸さんに触れられるとやっぱりこんな風になっちゃうんです」  靖幸の手は固まったまま、掌が剛毅の勃起したそこに触れる。急に強引な行動に出た剛毅に驚いたのか、靖幸は何も言わずされるがまま抵抗すらしなかった。なかなかそこを掴んでくれないもどかしさから、剛毅は靖幸の手を自分の股間にぐいぐいと押しつけた。自分でしていることだけど、靖幸に直接触れられているということが快感だった。 「ねえ、あなた興味があるんじゃないですか? 今までだって何度も俺の事構って……ほら……どう? 俺の……あなたに触れられてこんなになってる」 「……興味なんて、ない。離せ……」    離せと言う割に、剛毅の手を振り解こうとしない靖幸を見て、益々剛毅は興奮をした。  主導権はもう俺のもの──  そう思い、そっと靖幸の股間に手を伸ばす。手に触れたそこは案の定、少しだけ固くなっていた。 「さっきまでの元気はどうしたんです? 俺がこんなことしてビックリしちゃいましたか?……でもね、俺だってあなたと同じ男なんですよ」  そう言って、ちょっと強めに揉みしだくと、靖幸は「あっ…」と小さく声を漏らした。

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