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25 違う顔
「この間は俺がスッキリさせてもらったから、今度は靖幸さん……あなたに気持ちよくなってもらいますね」
あの時は「自慰をしろ」と命令されてのことだったが、剛毅にとっては靖幸に見られてのそれは気持ちよくしてもらったも同然だった。大人しくなった靖幸の反応に気を良くした剛毅は、その場で思い切って押し倒した。
「なんだよ! おい、あっ……」
「いいから、自分の見られるの、恥ずかしい? あ……ほらちょっと勃ってる」
靖幸は恥ずかしいのか両腕で顔を隠している。でも全く抵抗はされなかったから、調子に乗ってそのままベルトを緩め下着ごとずり下ろす。目の前にふるんと現れたペニスを剛毅は躊躇いもなく口に含んだ。
「おい!……あっ! やめろっ……んんっ、あぁぁっ……やだ」
「気持ちいいでしょ?……俺、フェラ上手いんですよ」
すぐに頭を擡げる靖幸のペニスを剛毅は執拗に攻め立てる。
「ふ……うっ……んんっ……」
されるがままの靖幸の姿が可愛い。自分の愛撫でこんなふうになっているのが嬉しくて、剛毅は自分の持つあらゆるテクニックを駆使して靖幸を攻めたてた。
「だめ……だ、いく……イクから、もう離せ……やだ……あぁ、だめ……うっ」
思ってたよりも早く靖幸は剛毅の口の中に精を吐き出す。剛毅は此れ見よがしに靖幸の目の前まで顔を近づけ、口内に出された精液を自分の掌にべぇっと吐き出した。
「見て、結構出ましたね。どうです? 気持ちよかったでしょ?」
凄い怖い顔をしてるものの、羞恥心からか真っ赤な顔。チラッと剛毅のことを見ただけで、顔を逸らしたまま靖幸は黙り込んでしまった。
剛毅は、まあしょうがないか……と思いながら、近くにあったティッシュで自分の汚れた手を拭い、靖幸の萎えてしまったペニスをもう一度舐め回してから、下着を履かせてやった。
「安心してください。別に俺、誰にも言いませんし、ほら……イくのが早かったのもね、俺のフェラが上手だったからってことで、靖幸さんが気にすることなんて全然ないですからね」
気不味いだろうと、ちょっとふざけた言い方をしてみる。すると靖幸は慌てて体を起こし、剛毅を睨みつけた。
「早いって……しょうがないだろ! 初めてなんだから!」
勢いよくそう言ったものの、ハッとした顔でまた剛毅から目を逸らす。そんな靖幸の様子を見て、堪らず剛毅は吹き出した。
「初めてって。もしかして、こういうことされるの初めてでしたか? あなたモテそうなのに、意外ですね」
確かにこういった性行為は靖幸にとっては初めてのこと。付き合った人はいたものの、相手は靖幸の態度に幻滅するのか、付き合ってもすぐに去っていったから親密な行為までには及ばなかった。
「……うるさい。笑うな!」
「あ、ごめんなさい。でも本当、心配しないでくださいね」
クスクスしながら剛毅は自分の服を整える。何も言い返せない靖幸に満足気な笑顔を浮かべ、帰っていった。
一人ポツンと部屋に残った靖幸は、ここで今起きたことが信じられずにいた。
まだじんわりと熱を持っているような感覚の自分の中心部にそっと触れる。脱がされて咥えられ、舌で舐られ剛毅の口の中に吐精した。
纏わりつく剛毅の舌。
時折様子を伺うようにジッと見つめる瞳。普段見せている顔とはまた違った剛毅の顔……
いちいち動作がいやらしく、その視線に耐えられずに目を逸らした。
……男なのに。俺は何をやってるんだ。
……何をされてるんだ。
また思い出して、靖幸は下着の中へ手を伸ばす。自分で触れて自慰をするなんて、いつぶりだろうか。最近になって湧き出てきた剛毅に対する加虐心を満たすために、俺は呼び出したはずなのに。
何でこんなことをしてるんだろう。
雰囲気にのまれてしまった自分に少しイラつきながら、靖幸はまた自分の掌に欲を吐き出した。
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