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31 少しづつ変化していく

 剛毅の方から舌を絡めると、グッと安田のペニスの質量が増したのがわかった。熱い滾りが体内に迸る感覚。ずるりと抜かれ、そのままぎゅっと抱きしめられた。  やっぱり剛毅は安田の行動に違和感を感じ、恐る恐る自分で目隠しを外した。 「安田さん……何だか、あの……珍しいですね。俺より先にイくなんて……」  視界がひらけ、改めて安田の姿を確認して少しホッとする。  剛毅に抱きついたまま、顔を上げずに安田は小さく頷いた。そして剛毅のペニスを咥え込み、そのまま剛毅も安田の口の中へ吐精した。 「たまには普通にしたかったんだ……」  目隠しをしたり叩いたりしたけど、普通とはなんなのだろう……と不思議に思う。それでも剛毅は黙って安田の腕枕に体を預け甘えて見せた。  事が済み、ベッドの中でこうやって会話するのも初めてのこと。まるで恋人を見るような雰囲気で頭を撫でられ、剛毅はどうしたらよいのかわからなかった。 「凄い感じてたな。目隠ししてたから? 誰を思ってそんな風に甘えたんだ?」  視界を塞がれていたからといって、剛毅は特に誰かを思い浮かべていたわけじゃない。目の前にいるのは安田なのに、他人を思い浮かべてセックスをするなんて事は剛毅の頭の中にはなかった。  それにそこまで安田のことを嫌っているわけじゃない。 「甘えてなんてないし、見えなくたって安田さんだろ?」  不思議に思ってそう言っただけなのに、安田にくすっと笑われて、剛毅は馬鹿にされてるように感じ少し不愉快に思った。 「なら何で俺と会ってこうしてる? 誰かの代わりじゃないのか? 俺は……」  あまりにも優しく見つめ微笑みかけてくる安田に、剛毅は思わず本音を漏らした。 「代わりじゃない……安田さんなら痕つけたり傷つけてくれると思ったから」  剛毅の言葉を聞いてもなお、言っている意味が理解できずに安田は首を傾げる。そんな安田を見て剛毅は笑い、更にベラベラと喋ってしまった。 「気になる人がいて、俺が体に傷付けてると気がついてくれて構ってくれるんだ。心配……まではしてくれてるのかはわからないけど。でも手当てするって言って呼んでくれるから。だからつい安田さんに連絡しちゃった」  話すつもりはなかったはずなのに、つい気が緩んで安田に甘えた。その時安田の顔色が変わった事など剛毅は少しも気づかず、優しく頭を撫でてくる安田に安心感すら感じていた。 「ほう……それで俺は呼び出されたわけね」  小さくそう呟くと、安田は剛毅から離れシャワーを浴びに行ってしまった。ベッドに残された剛毅は安田の後ろ姿をぼんやりと眺める。  そうだよ……  俺は安田さんのこと、最初は嫌っていたはずなのにな。優しくされるとすぐ気を許してしまう。余計なことを言ったかもしれない。  少し後悔が剛毅を襲ったけど、大丈夫だ……と自分に言い聞かせ、安田に続いてシャワールームへ向かった。  この事があってから、その後も剛毅は二度ほど安田と会った──  最初は剛毅から。二度目は安田の方から連絡があり「そろそろ痕をつけてほしいんじゃないか?」と誘われた。でも、初めの頃と比べ、段々と剛毅に対してまるで恋人同士のように接してくる安田に剛毅は少し不安を覚えた。

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