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41 目覚め

「知ってるよ……ごめんね。とりあえずさ、食べよっか」  そう言って、安田は作った野菜炒めを剛毅に取り分ける。剛毅はそれを受け取り、ひと口食べた。 「お! 何これ、美味しい。安田さんて料理もできちゃうんですね。俺なんか面倒だから外食かコンビニで済ませちゃうな」  剛毅は自分には好きな人がいると、安田がちゃんとわかってくれていたことに安心する。緊張も落ち着き、剛毅は気を良くして勧められるまま食事をし酒を呑んだ。 「剛君……剛君、大丈夫?」  ぐったりと安田にもたれるようにして眠ってしまった剛毅は、いくら揺さぶっても全く起きる気配がない。そんな剛毅を愛おしそうに安田は見つめる。そっとソファーに寝かせたまま、安田はテーブルの上を片付け始めた。洗い物を済ませ、また剛毅のもとへ戻ってくると、剛毅の眠る向かいに座り寝顔を眺めながらもう一度声をかけた。 「剛君……起きないよね? 君みたいなのはね、俺にしといた方が幸せなんだよ。ねえ、剛君。あんなすましたノンケなんてやめときな」  ふふ……と笑い、安田は立ち上がりリビングから出ていった。  どのくらい経ったのだろう──  ふと目を覚ました剛毅は、見慣れない天井を見つめる。  いつの間にか眠ってしまい、気がついたらベッドの上。安田の家に来た事はちゃんと分かってる。そんなに呑んだ覚えはないのに眠ってしまったなんて、疲れてたのかな……とぼんやりした頭で考えた。 「は?……マジかよ。何だよコレ……」  安田の姿を探そうと体を動かし、初めて気がつく。剛毅の足には拘束具が取り付けられていた。  体にかかる布団を剥ぎ、慌てて自分の足元を確認する。軽く開いた足首それぞれにベルトが付いており、そこに繋がる細いベルトは両端のベットの下に降りている。ベッドの脚に繋がってるのか、簡単に外せそうだとベルトに手を伸ばすのと同時に部屋のドアが開いた。 「剛君、やっと起きたね。おはよう」  目の前に現れた下着姿の安田に、心臓の鼓動が早くなる。そういえば今は何時なのだろう。厚手のカーテンが閉められていて、外が明るいのか暗いのかすら、頭がぼんやりしている剛毅には分からなかった。  でもあれからそんなに時間は経ってないはずだ……と自分に言い聞かせる。 「……すみません。俺、疲れてたのかな。ぐっすっり寝ちゃって、どうやってここまできたのかもわからなくて……」  貼り付けたような少し薄気味悪い笑顔を見せてる安田に気を遣いながら、剛毅は喋った。  拘束されてる時点で、自分の状況が良くない事は分かっている。剛毅は安田の機嫌を損ねないようにと細心の注意を払った。 「そりゃ眠っちゃうよね。ごめんね、ゆっくりしてもらいたくてちょっと薬盛っちゃった……」  にっこりとそう言う安田に恐怖を覚えた。何と言っていいのか言葉が出ない。 「あ、心配しないで。ただの眠剤だから」  ベッドに座る安田の手が剛毅の首に伸びる。反射的に剛毅はその手をぱっと払ってしまった。

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