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47 もどかしい

 キッチンのテーブルで落ち着きなく弁当を食べながら、剛毅はチラチラと靖幸の方を見る。少し離れたリビングの一人用の小さなローテーブルに頬杖をついてさっきから黙って剛毅の方を見ている靖幸と目が合った。こうも見つめられると何かを言わなくてはと気持ちも焦る。  なぜ安田と会っていたのか、仕事をサボってまで何していたのか、ちゃんと説明しろと靖幸の無言の圧力を感じた。    俯いてひたすら弁当を頬張っていると、いつの間にか目の前に来ていた靖幸に声をかけられた。驚き顔を上げると相変わらずな仏頂面で首元に手を伸ばしてきた。 「な……! なんですか?」 「酷い。ちょっと見せてみろ」  直ぐに首の痕の事を言われているのがわかり、剛毅は食べ終わった弁当のパックを流しに置いた。 「………… 」  シャツを脱ぎ、靖幸に言われた通りに肌を晒す。  靖幸の不機嫌な顔、自分を見つめる靖幸の目が鋭くてドキドキする。溜め息を吐きながら靖幸は剛毅の首に優しく触れた。 「ここ、噛まれたのか? 血が滲んでるぞ。なんでこんな事をあいつにさせる?」  好きでさせたわけじゃないいんだけど……でも今までの自分の行動を考えたらしょうがないのかな、と剛毅は思う。 「ちょっと話がしたくて会ってたんですけど……いつの間にかまたこんな風になっちゃいました」  なんと言ったらいいのかわからず、戯けるようにして笑顔を見せたものの、剛毅を見る靖幸の表情は変わらなかった。 「何なんだよ……何なんだ」 「靖幸さん?」  赤い顔をして靖幸が剛毅から目を逸らしブツブツと呟く。どうしたのかと靖幸を見た剛毅は、思うところがあり勇気を出して靖幸の手を握った。 「ねえ……やっぱり靖幸さん、俺のこと好きでしょ」  この人はきっと俺のことが気になってしょうがないんだ。  この感情は「好き」なんだと認めるのが怖いんだ……そう思った剛毅は握った手を離さずに靖幸を見つめた。  剛毅の言葉に靖幸は困惑した表情で小さく首を振った。そんな表情が可愛いな、なんて剛毅は心の中で微笑みながら話を続ける。 「ヤキモチ妬いたり、俺に抱きしめられて嫌じゃなかったり……安田さんと俺が会ってるのも嫌なんでしょ?……ねえ、言ってください」 「………… 」  前に会った時の靖幸の様子から、剛毅は薄々わかっていた。 「俺、あなたの事好きですよ。中学の頃、あなたに憧れてました」  あの時もそう言って靖幸の反応を確かめた。  付き合ってないのなら安田とは会うなと言った靖幸の言葉に、剛毅は嬉しく思ったのを思い出す。 「……だからなんだ? 別にヤキモチじゃないし……よくわからない。その、俺は……こういう風に他人にイライラしたり緊張したり……わからないんだ。そんなに見るな!」  慌てて靖幸は剛毅の手を振り払う。  もうここまでわかりやすい反応をしてるんだ、と、もどかしくなり剛毅は思い切って靖幸の頭を抱え強引にキスをした。

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