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53 形勢逆転

「何だよ! どこ触ってるんだ!……あっ……やだ……やめろ……触るな」 「あ、足閉じちゃ触れないでしょ……靖幸さん、暴れないで」  剛毅に足を掴まれ、いつの間にかローションを纏った指先で尻の奥の窄まりをグニグニと弄られ、ぞわぞわするのを堪えながら靖幸は抵抗した。 「ちょっと? 俺とセックスするんでしょ?……ここ、男同士はね……ここに挿れるんです」  つぷっと指先が入ってくる感触にどうしたって腰が逃げる。こんなところ、他人に触れられるような場所じゃない。恥ずかしさと情けなさと、様々な感情に襲われ靖幸は慌てて剛毅の動きを止めようと声を荒らげた。 「わかってる!……そうじゃない!……やだ、あっ……や……だから! なんでお前が……あっ……俺の尻に突っ込むんだよ! んっ……早く指を退けろ」  怒ってるくせに、たまに気持ち良さげな声が漏れるのが可愛いなあ、なんて、剛毅は靖幸の言葉を無視して指先を奥に進める。 「待って……ほんとに、はあ……あっ、んんっ……やっ……やだ! 違う……俺じゃ……ない……逆……だろ?」 「え? いいですよ。俺どっちもいけるんで……」  靖幸の言いたいことをすぐに理解し、あっけらかんとそう言う剛毅を靖幸は睨む。そんな靖幸に剛毅はハッとして手を止めた。 「もしかして、靖幸さん、俺に挿れたいの?」  一度萎えてしまった靖幸のペニスを弄りながら剛毅は頬にキスを落とし「俺のこと、抱くつもりでした?」と少し意地悪く耳元で囁いた。こくこくと頷いている靖幸がまた可愛い。 「俺のここに挿れるんですよ? ケツの穴ですよ……? 抵抗ないの? 初めてなのにあなた無理でしょ」  そう聞きながら、また靖幸の尻の割れ目に指を這わすと、グッとその手を掴まれた。 「無理じゃない! 俺がお前を抱くんだ!……いいから抱かせろ」  本当にこの人ってば……  剛毅は笑いそうになるのをグッと堪え、靖幸に顔を近づける。 「涙目で必死な靖幸さんも可愛いけど、そんなこと言われちゃったらグッとくるな……俺のこと抱いてくれるの?」  今日は本当に靖幸のことを抱くつもりでいた剛毅は、初めてのセックスに自分の愛撫で乱れる靖幸も見てみたかったのもありちょっと残念にも思った。 「だって……お前、いつもやられる方なんだろ? そっちの方がいいんだろ?」 「はあ、そりゃあ……まあ」  正直言って、靖幸とセックス出来るならポジションなんてどちらでもいいと思っていた剛毅は気の無い返事。靖幸はそんな剛毅の態度には気が付かずそのまま押し倒し羽交い締めにした。 「そもそも俺の尻にそんなもん挿れるつもりはない。大人しく挿れさせろ」 「………… 」  形勢逆転──  自分を見下ろす靖幸の目が思いの外色っぽくて、ドキッと胸が高鳴った。 「……何がおかしい。俺のことバカにしてるだろ? 笑うな!」 「バカになんかしてないですって。靖幸さんも男ですもんね……やっぱりかっこいいやって思って。ねえ、キス……して……怒ってないで早く続き……して?」  甘えるように靖幸の首に腕を回す。そして唇を半開きにして見つめてくる剛毅に吸い込まれるようにして靖幸は唇を重ねた。

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