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第13話:バルトロメオ13
自家製のパンにミルクに、これまた自家製のゆで卵という質素かつ贅沢な朝食のあと。ユァンはバルトロメオを連れ、建物の外へ向かった。
「まずは敷地の中をひと回り、案内した方がいいですよね?」
「そうだな。来たばかりで正直、右も左も分からない」
食堂のある本館を出ると、そこから正門まで続く糸杉の小道が高い空へと繋がって見えた。
ここ聖クリスピアヌス修道院はおよそ百五十年前、西欧からやってきた宣教師たちによりこの地に建設されたらしい。およそ百ヘクタールもある広々とした土地には、礼拝堂、宿舎や図書館など修道士たちの生活に必要な施設が建ち並び、建物の周りには家畜小屋や菜園、醸造所など生産関連の設備も整っている。そしてその外側が広々とした牧草地だ。そのほか小川や池、散歩道、祈りの洞窟等も広い敷地内には存在する。
このエリア全体が女人禁制で関係者以外の立ち入りも禁止されているが、一部の施設は一般公開されている。そこでは観光客向けのバターやクッキーなどの生産品が売られていて、修道院の貴重な現金収入源となっていた。自給自足の生活とはいっても、組織運営には多少の資金も必要だ。
主な建物の周りをぐるりと回ったあと、バルトロメオが感心したようにつぶやいた。
「なんというか、十九世紀にタイムスリップしたみたいだな。俺も教会育ちだが、法王庁直属のところはどこも近代化されている。山の中で、それこそ文明を拒否しているやつらもいるにはいるが……」
そういわれると、欧州の方にはここよりずっと厳格な自給自足の生活をしている修道院もあると聞く。
「十九世紀っていっても、ここは電気、ガス、水道は整ってますから」
だからユァンとしては、そこまで古めかしい生活をしているという感覚はなかった。
「だがこの中は車も走っていなければ、テレビも電話もインターネットもない。それに修道士たちは金も持ってない」
「それはまあ……そうですけど……」
どれも日々の生活に必ずしも必要ではなかった。
ピンと来ずにいるユァンに、バルトロメオが高い位置からぐっと顔を近づけてくる。
「欲しいと思わないのか? 例えばこういうものが」
何かと思えば、彼は修道服のポケットから薄い板状の携帯端末を取り出してみせた。
(えっ、これ……!)
街ではそういうものを、皆が一人一台持っていることは知っている。けど同じ修道士のポケットから出てくるとびっくりしてしまう。
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