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第15話:バルトロメオ15

(く、蜘蛛の巣! バルトさんのかっこいい髪が!) 「ん、どうした?」 「ちょっとその、あの……」  自分のせいでこんなことになったのかと思うと、必要以上にあせってしまう。 「ん?」 「あ、そのまま……」  バルトロメオが不思議そうに顔を近づけてきたので、屈んでもらい髪の蜘蛛の巣に手を伸ばした。 (この髪型は、一本一本を編んで作るのが大変そう。それに洗うのも大変かも?)  ドキドキしながら髪に触れ、慎重に蜘蛛の糸だけを取り去る。  ふと髪から顔に目線を落とすと、彼の方も緊張の面持ちだった。 「もう少しだけ待ってくださいね?」  彼の髪から取った蜘蛛の糸を自分の指に絡ませながら、他にもないか入念にチェックする。 (よし、大丈夫! 元通りのかっこいいバルトさんだ) 「もう大丈夫ですよ」  取った蜘蛛の糸を見せながら伝えると、彼はおもむろにその手に触れてきた。 「ありがとう、だが、この手は」  笑いながら彼は、ユァンの指についた蜘蛛の糸をこすり落とす。 (あ……)  指の太さも長さも全然違って、サイズが違うのは身長だけじゃないんだと驚いた。ザラザラした指紋の手触りにも、彼の男っぽさを感じる。 (どうしよう、こんな……)  目の縁からびっしりと生えた黒いまつげに視線が行った。その目はユァンの手元へ、真剣に注がれている。 「よし、オーケーだ」 「え……?」 「蜘蛛の糸、取れたぞ?」  手元に落とされていた目がこっちを向いて、近い距離で目が合った。 「……!」 「…………」  彼の目が微笑みの形に細められる。 「……ああっ、山羊、追いかけないと」  微笑み返すこともできずに、ユァンはバルトロメオから目を逸らした。  *  目の前の木の枝を払うと、ぱっと視界が開け、牧草地の雄大なパノラマが広がった。  サワサワと草のなびく音が耳に心地いい。  山羊たちはもうあちこちで、草を食み始めている。山羊はお腹が空けば小屋の敷き藁でもなんでも食べてしまうけれど、やっぱり新鮮な牧草は美味しいらしい。美食家の彼らはそれに目がなかった。 「いち、に、さん……」  山羊の数を確認したユァンは、牧草の代わりに爽やかな春の香りを胸に満たす。 「僕らもここで休憩です」  後ろから来たバルトロメオにそう伝え、草の上にハンカチを広げた。そしてそこに座るよう勧めようと思って振り向くと、彼はもう草の上に横になっている。 (――早っ! っていうか僕が遅いのか)  テンポの遅いユァンは、仕方なく自分の尻を広げたハンカチの上に収めた。

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