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第18話:バルトロメオ18

 バルトロメオは続ける。 「しかもアンタは相手が分からないんだから、用心のしようがない。よっぽど気を張って警戒していないと。隙を見て後ろからガツンといかれる」 「…………」 「はあ、ピンと来てないって顔してるな」  顔を覗き込んできたバルトロメオが、苦笑いで息をついた。それから何を思ったのか、彼はさらに顔を近づけてくる。 「ユァン……もし俺が犯人だったらどうする?」 「えっ?」 「アンタが来た時、すでに俺とあいつと、それからペティエ神父だったか? その三人が現場にいた。そして神父は倒れていた」 「そう、ですね」  相づちを打つものの、ユァンには彼の言おうとしていることが分からなかった。 「神父を殴ったのは鍬を持ったやつかもしれないし、俺だったっていう可能性もある。それから、二人が共犯だった可能性もあるし、犯人はあそこにいた人間以外かもしれない」 「それは確かに……まあ、あり得ますが」  眉毛の一本一本も分かる距離で、バルトロメオが眉をひそめる。 「あり得はするが、実際はないと思ってる」 「え……?」 「だから俺にこの距離に来られても平気でいられるんだろう」  右手、それから左手。草の上に突くユァンの両手に、彼の手のひらが重なった。  そこに体重が乗ってきて、そのことに驚くうちに額を合わせられる。 「えっ、なんですか?」 「ほら、もう逃げられない」  上唇の先がかすれるように触れ合った。 「なっ、なに……なんですか……」  手の甲に乗る重さ、熱っぽい額と、顔にかかる吐息。相手の存在感に呑み込まれそうになる。胸の鼓動が速かった。自分より大きな男にこうされて、はねのけられる気がしない。  頭の中が彼でいっぱいになった。 「バルト……さん……僕は……」 「なんだ? 何もしてないのに息が上がってるぞ?」  近すぎてぼやけているけれど、彼の唇が意地悪く笑ったのが分かった。 「なんで、こんなことをするんです? 僕はあなたが……ペティエ神父を殴ったとは思いません」 「状況的にそう思うだけだろう、確証はない」 「確証?」 「ああ、そうだ」 (あっ……)  額でぐっと押される。 「どうする? このまま押し倒してやろうか? 俺にはそれができる、アンタは逃げられない」 「……っ……」  上半身を後ろへ引いても、その分向こうが押してきて意味がなかった。後ろに倒れそうな体を苦しい角度で支えている両腕が震える。 「ほら、そんな顔をするなら……」  彼の熱っぽい吐息が、空気を揺らしてユァンの唇にかかった。 「ちゃんと警戒しろ。昨日のことがなくたって、アンタみたいの、すぐ狼に食われちまう」 「あっ……!」  こらえきれずに、ユァンは後頭部から後ろに倒れる。頭と背中に衝撃がくるのを覚悟したけれど、倒れたところは彼のたくましい腕の中だった。

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