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第21話:バルトロメオ21

「バルトさんは仕事で来ているんでしょうに」  そんな人に懐いてしまっても、別れたあとが寂しい。 「なんだ、拗ねてるのか。そんな顔されたら、国に連れて帰りたくなる」 (え……?)  ベッドの上であぐらを掻いていたバルトロメオの隣へ、おもむろに腰を引き寄せられた。 「な、なんですか?」 「これ」  彼は向こう側の耳から外したイヤフォンの先を、ユァンの片耳に突っ込んでくる。 「一緒に聴こう。この曲はユァンも好きだろう」 「そんなこと、僕はひと言も」  けれどそれは以前、牧草地でも聴いていて、なぜだか耳が追いかけてしまう曲だった。 「ふうん、好きだと思ったんだが」 「好きってわけじゃ……けど多分、嫌いじゃないです」  戸惑いながら答えると、バルトロメオは満足そうに笑う。 「ならよかった」  これはこの人の優しさなんだろうか。こうやって肩を寄せ合って音楽を聴くのも、なんだか心地よい気がした。 「これは二十世紀末、世界的に流行った曲で……ああ、こっちもアンタにやる」  イヤフォンからの音に集中していたら、今度は食べかけのポークジャーキーを口に突っ込まれた。 「むぐ! ちょっと……」 (あれ、コレまだ生乾きだけど美味しいかも?)  ユァンの表情の変化を見計らうようにして、バルトロメオが言ってくる。 「結構美味いだろ?」 「美味しい……です」 「アンタ細いんだからもっと食うべきだ」  それからバルトロメオは食べ物の話や音楽の話をぽつぽつと、しかし楽しそうにしてくれた。 (バルトさんは自由で楽しそうで、ちょっと羨ましい)  耳は音楽を聴きながら、目はバルトロメオの楽しそうに話す口元に釘付けになっていた。 (これじゃあ、僕も共犯だな……)  こんな夜中に音楽と盗み食い。いけないことをしているのに、背徳感よりもすがすがしさが勝ってしまう。 (ちょっといろいろ、価値観が揺らいじゃうな)  そんな時、イヤフォンとは逆の耳が、部屋の外の音を捉えた。

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