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第22話:バルトロメオ22
「バルトさん、誰か来た……!」
彼と自分の耳からイヤフォンを引き抜き、ユァンはそれをバルトロメオのポケットに押し込む。
その時彼の視線はテーブルに置かれたポークジャーキーの皿に向いていた。ベッドと衣装ケースくらいしかない殺風景な部屋に、それを隠せる場所はない。
「どうしよう?」
「俺に任せろ」
あせるユァンを落ち着かせるように、バルトロメオが肩を叩く。
そしてゆったりとした足音がドアの前で止まった時、彼はポークジャーキーの皿を手に、窓から屋根の上へ飛び出していた。
この部屋は三階だ。さすがに屋根から滑り落ちるとは思わないけれど、心配にはなる。
「ユァン、いいかな?」
ドアの外から聞こえる声は、シプリアーノ司教のものだった。
「どうぞ」
口の中にあったポークジャーキーを無理やり飲み込みドアを開けると、司教がゆっくりと部屋を見回した。
「彼は?」
「ブラザー・バルトロメオでしたらいま外に」
嘘はついていない、とユァンは胸の中で確認する。
「あの方にご用でしたか?」
「まあね、だがいないなら仕方ない。ああ、ユァン……」
ユァンを見つめ、司教はもの言いたげな顔をした。
(もしかして、ポークジャーキーの匂いがしてる!?)
ユァンは息を止める。
「ユァンは大丈夫なのか? 困っていないかね?」
「え……?」
気づかわしげに聞かれている理由が分からなかった。司教が目尻に笑いしわを作り、声をひそめて教える。
「ブラザー・バルトロメオのことだ。聞くところによると、彼は結構な問題児らしくてね」
「ああ……」
確かに問題がないとは言えない。けれどもどんな顔をしていいか分からずに、ユァンは曖昧に首をかしげた。
「何かあったのか?」
「いえ。ただ少し、変わった人だなと」
ユァンがそれだけ言うと、司教はひとつ頷き、話しだす。
「彼は法王に近い枢機卿 の甥でね。教会内で、彼の自由な振る舞いを諫 められる人間はあまりいないらしい。将来は法王の側近にも、枢機卿にもなり得る人間だからね」
「そうだったんですか……」
バルトロメオのあの聖職者らしからぬ人柄は、逆に教会中枢部で育まれたものだということにユァンは驚く。だが確かに、そんな家柄にでも生まれなければ、あの人が自ら教会に所属するとも思えない。だからこそ司教の話は納得のいくものだった。
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