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第28話:バルトロメオ28
混乱する頭で考える。この音声が示すのは、誰かが夜の礼拝堂で何かしているという事実だ。それはきっと人に言えない類いのもの……この声は情事の時のそれにも聞こえるが、あまり知識のないユァンには確かなことは分からなかった。
ただ、嫌悪感がひどかった。神のおわす礼拝堂でそんなこと……あり得ない。きっと何かの間違いだ。こんなこと、探ろうとしてはいけない。
ふるふると首を振り、ユァンはバルトロメオを睨んだ。
「隠し撮りなんてよくない」
「俺も好きこのんでやってるわけじゃない」
それはそうだろう。調査のため。だけど……。
「他にもやりようはあるはずだ」
ユァンは動揺をぶつけるように、差し出されていたイヤフォンを乱暴に押し返した。
*
(もしかして、また録音を仕掛けに行くつもりなんじゃ?)
山羊小屋を出たユァンはバルトロメオを追いかける。作業着のまま礼拝堂に入るのはためらわれたが、今は仕方ない。
(神よ、不作法をお許しください!)
ロザリオを握り祈ってから裏口のドアを押し、敷居をまたいだ。
ちょうど月が雲に隠れてしまって、灯りのない礼拝堂の中は真っ暗だ。そんな中しんと静まりかえった空気がなんともいえない緊張感を醸し出していた。
手探りでそろりと足を進めると、こもった空気が足首に絡みつく。天窓以外に窓のない礼拝堂は、広々としている割に通気性がよくなかった。
「バルト?」
小声で呼びかけたが返事はない。
(……いないの?)
そう思った次の瞬間、イヤフォン越しに聞いた喘ぎ声を思い出す。
(どうしよう? 今日もあの人たちがいたら……)
あの声はきっとそんなことじゃないと信じたいのに、絡み合う人たちを見てしまうのが怖かった。
だがすぐさま引き返すという決断もできない。バルトロメオがどこかに携帯端末を仕掛けたなら、それを探して回収した方がいいんだろうかとも考えた。
暗闇の中にしばらく意識を集中しても、物音は聞こえてこないし人の気配も感じられない。液晶画面の光らしきものも見つからなかった。
(宿舎に帰ろう。ここにいても仕方ない)
そうして裏口を振り返ろうとした時――。
(え――!?)
いきなり後ろから、大きな手に口を塞がれた。
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