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第46話:教会の子供たち12
そして復活祭を目前にした日曜日。
修道院内の宿泊棟で、ペティエ神父主催、子供のための〝復活祭を祝う会〟が開かれた。時刻は夕食の鐘の鳴る十八時。集まったのは十二歳から十五歳までの子供たち二十人程だった。
宿泊棟は修道院の中でも奥まった場所にあり、特別な来客がある時にしか使われていない。
ユァンは建物を囲む糸杉の陰から、玄関前に集まっている彼らの様子を窺 う。
ピエロの仮面を被った修道士が、子供たちにウサギの仮面を配っていた。ウサギは復活祭のシンボルだ。
子供の中にどう紛れ込もうかと思案していたところで、誰かが後ろからユァンの肩に触れる。
ドキリとして振り向くと、そこにはウサギの仮面を手にしたバルトロメオが立っていた。
「それ……!」
「ああ、あそこからひとつくすねてきた」
彼はピエロの仮面を被った修道士が手にぶら下げているかごを指さす。
「そういうこと、本当に得意だね」
呆れてしまうが、その手癖の悪さも今はありがたい。スパンコールが貼られたウサギの仮面を、ユァンはバルトロメオから受け取った。
目元から鼻筋までが隠れる形だから、これを被れば顔は分からないだろう。ユァンの独特の明るい髪色も、ここへ来る前に絵の具で黒く染めてきた。
仮面を被ると、頭の先から足下までを眺めたバルトロメオがため息交じりに言う。
「かわいいウサギだな。俺がさらって帰りたい」
「バルト」
「冗談だ」
「分かってるけど……あっ」
身を屈めてきた彼に、木陰で唇を奪われた。器用な舌が口の中へ押し入ってきそうになって、ユァンはウサギのように木陰から飛び出す。今そういうことをされたら〝仕事〟を忘れてしまいそうだった。
「ユァン」
「行ってきます」
恋人の誘惑を振り切る。
ちょうど子供たちが建物の中へぞろぞろと入っていくところだったので、ユァンは静かに駆け寄り、列の最後尾に続いた。
*
建物に入り、広間へ進んでいくとそこには立食形式のディナーが用意されていた。
奥の大きなスクリーンには子供向けのアニメ映画が流されている。
「今日はもう散々聞いただろうからね、ここではお堅い聖書の話はナシだよ。自由に過ごしておくれ」
背の低い男が広間の入り口でお菓子の詰まった袋をニコニコと配っていた。銀色の仮面を被っているが、声と背格好からしてペティエ神父だろう。ユァンは子供の列に続いてお菓子を受け取った。
「ありがとう、ブラザー」
目を伏せてお礼を言うと、さらりと顎の下を撫でられる。
(えっ?)
正体に気づかれたと思いドキリとしたが、神父は何も言わなかった。ただ仮面越しに緩んだ目元を向けている。
(え、と、バレてはいない? 子供を演じるには、ここでどうすればいいんだろう?)
―――――
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